日本は現在、世界屈指の“痴漢大国”と揶揄され、CHIKAN(痴漢)は、世界で通じる日本語のひとつになっている。そんななか、ある母娘が考案した「痴漢抑止バッジ」が注目を浴びている。痴漢を取り巻く日本の現状と、痴漢抑止バッジの効果に迫る。(清談社 真島加代)
「制服」が痴漢のターゲットに!
卑劣な加害者の心理とは
満員電車のなかで起きる卑劣な犯罪行為の代表例といえば“痴漢”だろう。日本の電車内での痴漢発生率は世界一高い一方で、正確な数字を把握することができないという。
「被害者の多くは中高生の女子で声を上げることをためらうケースが多いため、被害者が泣き寝入りするケースがほとんどです。警察庁の統計では、実際に被害届を出しているのは、全体の1割ほどの被害者と見られています」
そう話すのは、『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス)の著者で、大森榎本クリニックで精神保健福祉部長(精神保健福祉士・社会福祉士)を務める斉藤章佳氏。榎本クリニックでは性犯罪加害者を対象にした更生プログラムを日本で先駆的に実施しており、斉藤氏も数多くの痴漢加害者や被害者に接しているひとりだ。
「痴漢加害者は、発覚リスクが低い相手をターゲットにする傾向があります。その際に指標になるのが女子中高生の“制服”なんです。彼らにとって制服は従順であることの象徴になっているので、『痴漢されても、大きな声を出したりできないだろう』と判断して痴漢を繰り返します。ある女性は、高校生の頃、毎日のように電車で痴漢に遭っていましたが、卒業後に私服で乗車したところ、痴漢に遭わなくなったそうです。同じ時間帯の同じ車両に乗っても、制服を着ていないだけで痴漢のリスクが下がるというエピソードです」
そして、被害者側も「みんな被害には遭ってるし、わたしが我慢すればいいんだ」というあきらめや、「痴漢されていることがバレたら恥ずかしい」という羞恥心によって、声を上げられないケースがとても多いという。
「痴漢被害に遭っていたという理由で遅延証明書を発行してもらうことや、職場や学校に遅刻を申告することは、被害者にとって負担が大きいのです」