その言葉にAはすっかり上機嫌になった。

「A部長が尽力されていた乙社の件で…」
「取引が決まったのか?」
「はい。早速、部品1万個の注文をいただき、見積もりを依頼されたのですが、単価を決めかねています。私は3000円で提示しようと思いますが、どうでしょうか?」

 見積書を見たAははっきりと告げた。

「今回は2800円にしておいた方がいい。乙社は来年事業規模を拡大する予定だから、ここで関係を強くしておけば、将来さらに注文数が増えるはずだ」

 するとC部長の顔色がパッと明るくなった。

「さすがはA部長です。ご指摘ありがとうございます。交渉は来月なので頑張ります」

 C部長以下、部員たちから羨望のまなざしを受けたAは心の中で呟いた。

「俺もまんざらでもないな」

Aの厳しいチェックに部下の不満が爆発!
C部長はAの暴走を止められるか?

 その後、毎日昼下がりになるとAは営業部に来るようになり、頼まれもしないのにC部長や部員たちの仕事の内容をチェックすると、ダメ出しを連発した。

「ダメダメ、そんなんじゃ。押しが弱すぎる!」
「この資料じゃ、ライバル社とのプレゼン競争に勝てないぞ!」

 最初は黙って聞いていた部員たちだったが、やがて不満を漏らすようになった。困ったC部長はAに対して「勝手な指示は出さないでほしい」とやんわり頼んだ。ところが、「うるさい!ロクに仕事もできないくせに」とかえって逆ギレされてしまった。

 そこで総務部のB部長に相談し、部内から抜け出さないよう何度も厳重注意してもらったが、まったく効果がなく、Aの暴走ぶりにB部長、C部長とも完全にお手上げ状態だった。

C部長の離席中に
Aが行ったこととは…

 9月上旬、いつものように営業部にやってきたAは、ふとC部長の席上にあるパソコン画面に目をやった。そのときC部長は離席していた。

「この間話していた乙社の見積もりだな。どれどれ…」

 画面をスクロールをさせると、金額欄が表示された。