2020年米大統領選挙に向けた共和党の予備選は、何事もないものとなりそうだ。文字通り、何もなくなってしまうかもしれない。アリゾナ、カンザス、ネバダ、サウスカロライナ各州の共和党指導部は、州の予備選を実施しないことを決めた。州の代議員選出の期限に定められた10月1日までに、さらに多くの州が予備選をキャンセルするかもしれない。自党の大統領が再選を目指しているのに予備選を実施すれば、大統領が泡沫候補の攻撃を受け、来年11月の本選で再選の可能性が低下しかねないというのがその理由だ。各州の党指導部によるこの主張には、ある程度の正当性がある。1992年の大統領選に向けた共和党予備選では、パット・ブキャナン候補がジョージ・H・W・ブッシュ大統領に挑戦し、予備選初期の段階で3分の1の票を獲得した。この予備選でブキャナン氏が勝利した州は1つもなかったが、同氏の挑戦が、大統領選挙の本選でのビル・クリントン氏の勝利につながったとの見方もある。しかし、この年の大統領選挙でブッシュ氏にはるかに大きな打撃を与えたのが無所属で出馬したロス・ペロー氏であることは、ほぼ間違いない。