入り口すぐにコンシェルジュカウンターがあり、対話型ロボットPepperと行員が来店客を出迎える。客はそこでキャッシュカードによる本人確認を受け、要件を告げれば、その後の手続きをすべてペーパーレス、印鑑レスで進めることもできる。

 ATMと窓口は統合され、ATM操作がわからなければ、すぐに行員がサポートしてくれる。さらに店内には扉がついた相談ブースも用意され、対面で相続や預かり資産、個人・法人融資などの相談を受け付けている。

 全体として落ち着いた空間であり、顧客が快適に銀行のサービスを受けられるよう、配慮が行き届いているのだ。

 このような店内環境やシステムが実現できたのは、支店の事務作業を本部に集中するなどの改革を実行したからだ。

 とはいえ、2支店の統合だけでも大変なのに、前例のない次世代型業務運営への転換も同時に行うという大改革。本書によると、さすがに一筋縄ではいかなかったようだ。

 矢野一成氏は、この松山北支店の初代支店長である。大改革を実現する新店舗運営について「とにかく、苦労の連続でした」と当時を振り返っている。

 従来よりも簡素になったとはいえ、業務フローの激変に、行員も来店客も当初は大混乱。小さなトラブルは日常茶飯事で、毎日が苦情の嵐という状態が、しばらく続いた。

 当然、支店長である矢野氏は激務に追われた。やっと運営が落ち着いたのは、同支店オープンから半年たった後だったという。

 そんな中、矢野支店長は、どのように部下をマネジメントしつつ、嵐を乗り越えたのだろうか。また、厳しい環境に置かれた銀行業界をサバイブするコツを、どのように捉えているのか。

業務効率化は「目的」ではない
顧客サービス向上のためにすべきこととは?

 厳しい環境の中、銀行が生き残るには、旧態依然の無駄な業務をできる限り効率化していくことが不可欠だ。だが、「それだけでは意味がない」と、本書で矢野氏は語っている。

 業務量の削減は、手段であって目的ではない。業務改革の本来の目的は、削減した分、顧客の付加価値を増大することのはずだ。

 それを踏まえた矢野支店長の方針は、顧客と、その顧客にサービスを提供する行員のどちらも大事にすることだ。矢野氏はこれを徹底した。