料理とのマッチングを考えて
蕎麦は二八で粋な風情のものに

 佐藤さんは18歳で料理の道に入った。すぐに家の知り合いの料理屋に入り、ホテルの厨房にも入った。東京の高級料亭を経て、25歳の頃、広尾にあった名店「箱根・暁庵」に料理長でスカウトされた。暫くして、蕎麦も料理も任されて店長で8年ほど腕を振るった。

箱根の名店「暁庵」の店長を長年務めた佐藤暢紀さん。経験を積み重ねた料理と蕎麦を一体にした蕎麦割烹の店「さとう」を3年前に興す。お任せのメインは旬物食材の鍋物だ。

 そして、2009年7月、自分が理想としていた蕎麦と割烹の店「さとう」を開いた。カウンターで客の顔を見ながら、築地から目利きした白身魚を下ごしらえし、昆布締めしたものを盛り付ける。

 客の箸が褄に掛かった時に、岩手の父親が採った山菜を油にさらりと落として天ぷらにする。開店前から構想はできあがっていて、客への対応のイメージもあった。だが、客が望む配膳のタイミングやペースはそれぞれ違うことを知っていた。

 客が日本酒好きか、ワイン好きか、食材に好みはあるのかは、そのことは次の予約には生かしたいと思っていた。この3年間、馴染み客が着実に増え、佐藤さんの前のカウンターから客が埋まり始めるのは、客がその細やかなもてなしを肌で感じるようになったのだろう。もし、初めての訪問で客を案内するのなら、これほど安心して任される店はないだろう。

 根っからの料理人の佐藤さんが蕎麦割烹の看板を上げるときに、一番考えていたことは蕎麦と料理のマッチングだという。粗挽きでガツンとくるような蕎麦では調和が取れない。料理と同じように品を大事にしたいという。

「二八で粋な風情の蕎麦にしたい。それがうちの客の好みでもあるようです」(佐藤さん)。

 その蕎麦は美しい風姿をしていた。シャープな切れ口、流れるような麺体、蕎麦の最終仕上げの包丁使いの鮮やかさが想像できる。

粗挽きでは料理との調和が取れないからと、蕎麦は二八蕎麦を出している。シャープな切れ口、流れるような麺体、蕎麦の最終仕上げの包丁使いの鮮やかさが想像できる。