大きなビジョンがあるからバカにもなれる

例えば、家族に誇れる恥じない仕事をして、子どもたちに良い未来を残したいというビジョンを持っているとしましょう。この場合、ビジョンをともに実現すべきパートナーとしてふさわしいかどうかが取引先に対する判断軸となります。

だからと言って、木で鼻をくくったような断り方をすれば無駄な軋轢を生むおそれがあるし、先輩の面目も丸つぶれです。こんな時は、相手の狙いや予想をはるかに上回る、大きなビジョンをそのままぶつけてしまうのも1つの手でしょう。

「○○さんと仕事ができるなんて光栄です。今まで以上に強力に連携して、歴史を塗り替えちゃいましょう。ぜひいろいろ教えてください。そんな大切な方にごちそうになるなんて、恐れ多くてできませんよ。むしろこちらがごちそうしなきゃいけないくらいです。それより、どんなアプローチなら、今の苦境を脱出できて、みんながもっと幸せになるか一緒に考えませんか?」

はい。これでははっきり言って空気の読めない人です。バカだと思われるかもしれません。先輩の不興を買うかもしれません。でも相手の立場や考え方を否定せず、自分のポジティブな考えをひたすら明るく打ち出すことで、決定的な対立は避けられるはずです。そして、ビジョンが大きいからこそ、空気が読めないバカだと思われることも厭わない。

当事者はともかく、それを近くで見ていた人の中には、大きなビジョンと前向きな姿勢に賛同してくれる人も出てくるかもしれません。

関電幹部やその候補者の中にも、そんな人がいたのではないでしょうか。だとすれば、出世コースから外れて、どこかで復活の時を待っているはずです。

そんな人に、今回の件で経営陣が一新されるようなことがあれば、ビジョンを実現するチャンスがめぐってくることになります。そのビジョンが人を惹きつけるものであるなら、力を貸してくれる人も必ず現れるでしょう。

「きれいごと」のビジョンには意外と力がある。――コンサルタントとして、多くの組織にビジョンを起点とするOODAループ思考を埋め込むお手伝いをしてきた私の実感です。

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  適時開示「電気料金の値上げの認可について」2013年4月2日
https://www.kepco.co.jp/ir/brief/disclosure/pdf/kaiji20130402-1.pdf