福井県高浜町の助役・森山栄治氏から金品を受け取っていた関西電力。記者会見では森山氏のヤクザも真っ青な恫喝が明らかにされたが、被害者面で幕引きを図ろうとする関電の記者会見には、経営責任をうやむやにするためのテクニックが見え隠れする。(ノンフィクションライター 窪田順生)
ヤクザも真っ青
恐ろしい恫喝の数々
「M」とか「影の町長」なんて怖がられる人だから、普通じゃないとは思っていたが、まさかここまでだったとは、とドン引きしている方も少なくないのではないか。
原発マネーの「還流」疑惑で批判に晒さている関西電力が昨日、再び会見を開催して、幹部に3億2000万相当の金品をバラ撒いていた福井県高浜町の助役だった故・森山栄治氏が、関電社員らにヤクザも真っ青の「恫喝」を繰り返していたことを明らかにしたからだ。
会見の資料として公表された調査委員会の報告書には、森山氏の悪行三昧が、これでもかというくらいの勢いで並べ立てられている。その一部を抜粋しよう。
《「お前なんかいつでも飛ばせるし、何なら首も飛ばすぞ」などといった発言があった。また、社内では過去の伝聞情報として、森山氏からの圧力に耐えかねて、対応者の中には、うつ病になった人、辞表を出した人、すぐに左遷された人などがいる、などの話が伝えられることがあった》
《自身やその家族の身体に危険を及ぼすことを示唆する恫喝として、「お前の家にダンプを突っ込ませる」などといった発言があった。また、社内では過去の伝聞として、対応者が森山氏から「お前にも娘があるだろう。娘がかわいくないのか?」とすごまれた、別の対応者は森山氏のあまりに激しい恫喝の影響もあって身体を悪くして半身不随となった、その対応者は身の危険もあることから経緯を書いた遺書を作って貸金庫に預けていた、などの話が伝えられることがあった》
そんな数々のパワハラ列伝を目にすると、「うちの会社にも来るよ、こういう老害。社長を呼べとか騒いで対応に困るんだよな」なんて共感するサラリーマンの方もいらっしゃるかもしれない。筆者もいくつのか業界で、いまだにこういう昭和型の恫喝を行う、その世界のレジェンドの対応をしたことがあるので、そのあたりの苦労は痛いほどわかる。
その一方で「情報戦」という観点からこの報告書を読むとどうしても、こりゃまたずいぶんとベタなやり方で、経営責任を回避してきたなという感想になってしまう。