日本の山が危ない 登山の経済学#6

高いシェアを占め、業界での歴史も長い競合が存在する市場に、後から参入して成功するのは容易ではない。特集「日本の山が危ない 登山の経済学」(全6回)の最終回では、登山市場においてこれまで競合が掘り起こせていなかった新たなユーザーを発掘し、成功を収めている2社のビジネスに迫る。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

山ガールブームの仕掛け人
PEAKS・ランドネが10周年

 2009年。日本の登山雑誌業界にそびえ立つ「山と溪谷」「岳人」という双璧に挑む、少々変わった新参者が現れた。ホビー雑誌社の枻出版社が創刊した「PEAKS」と「ランドネ」である。

「競合2誌と争っても意味がない。ならば、これまで山に関心がなかった読者に集中すべきと考えた」と、2誌の立ち上げを担当したPEAKSの朝比奈耕太編集長は振り返る。30代の男性とそれに女性という新規顧客だ。

 PEAKSでは、登頂にはこだわらずテントで山旅を楽しむスタイルを押し出し、若手男性をターゲットにした。ランドネでは派手な色のタイツとその後一世を風靡することになる“山スカート”で山に登るという、当時は考えられなかったスタイルを提案したのだ。山ガールブームは、百名山ブームが終わりかけていた当時、新たな客層を山に送る起爆剤となった。

 あれから10年。PEAKSとランドネの部数は伸びている。PEAKSは折り畳みフライパンやスキットル、登山用ポーチなど編集部オリジナルの山道具の付録効果もあり、毎号完売に近い実売率を誇る。10年前に読者になった30代が、40代になった今も根強い支持層になっているという。

「PEAKS」と「ランドネ」
PEAKSの山道具の付録は、開発に半年を費やす本格的なもので人気が高い

 山ガールを生んだランドネは、読者のコミュニティー化に注力する。読者間で仲間意識が生まれやすい雑誌であり、限定ECサイトや「ランドネ山大学」という少人数制の女性限定登山ツアーを開催したりしている。今年からは「たのしみ隊」という名称で読者モデルや取材体験ができる会員組織も立ち上げた。「現在弱体化が進んでいる山岳会の新しい形を提案したい」と朝比奈編集長は言う。

 最強に見えた競合2誌は相次ぎ再編に巻き込まれた。遅れてきた新規参入組は第三極として存在感を増しつつある。