9月21日号の本欄では「トランプ米大統領の関税引き上げは唐突に発表されている印象があるが、株価水準は考慮されている可能性が高い」「米中貿易問題がさらに過熱しなければ、(中略)投資リスクに見合ったリターンが期待できるのではないかと考えている」との見通しを述べた。
その後、日米貿易交渉が一部先行して妥結し、米国も10月1日に予定していた関税の引き上げについて15日まで延期するなど、事態の進展が期待されたこともあり、日経平均株価は一時2万2000円に乗せる場面があった。
特に今まで出遅れていた割安株を中心に買い戻され、9月は日本株の急反発の月となった。その主役は海外投資家で、9月の最初の3週間で1兆円程度の買い越しに転じた。これは海外投資家の日本株のポジションが少なく、上昇局面では買い需要が大きいことを意味していると考えられる。
海外投資家は2012年12月から始まったアベノミクスでは最初の2年半は大きく買い越し、一時は累計で21兆円の買い越しまで日本株を買った。しかしその後は継続的に売り越しに回り、今年の8月には売買累計ベース(先物を含む)でついにゼロの水準に達した(上図参照)。
海外投資家はアベノミクスに期待して買い入れた日本株の大部分を売却したと考えられ、海外投資家の日本企業に対する期待値はすでにかなり低いことが分かる。今年の日本株は海外主要市場に比べて大きく出遅れている。しかし、株価バリュエーションは割安になっており、来年にかけての四半期業績は前年同期比でプラスに転じてくるだろう。
来年にかけての株式市場は米中貿易問題と世界の景気サイクルの行方次第だが、そもそも、日本は輸出立国であり、貿易や景気が落ち込むマイナスのインパクトは非常に大きいのではないかという懸念も耳にする。
しかし、輸出がGDP(国内総生産)に占める割合(下図参照)を比較してみると、世界経済の中では飛び抜けて高い感応度を持っているわけでもないことが分かる。
筆者は、日本株は利益の伸び率は低いものの配当利回りが高く、PER(株価収益率)の低い割安銘柄に魅力的な銘柄が多く隠れていると考えている。
9月21日号の本欄では米国株と日本株の配当利回りの差を掲載し、日本株の配当利回りがここまで米国株よりも高いのは、アベノミクス前夜の12年後半以来であると指摘した。
その配当利回りの高さはその後の株価の上昇によってやや低下したが、引き続き高水準である。日本株に細かく目を配れる日本の投資家の強みを生かすときであろう。
(UBS証券ウェルス・マネジメント本部ジャパンエクイティリサーチヘッド 居林 通)