「あの、どれくらいで治りますか?」

「わかりません。ただ、命にかかわるものではないので、安心してください。めまいに効くお薬と、吐き気を止める飲み薬を出しておきますから飲んでみてください。お大事に」

 あっさり家に帰された。

 医師は「そのうち治まる」と言ったが、症状はその後もあまり改善しなかった。薬は効いている気がしない。動くとめまいがひどくなるため、1日のほとんどを布団のなかで過ごすが、横たわった状態でもふらふら感はある。倒れるのが怖いので、トイレなどははっていく。寝返りを打つと、数十秒ほどだが強いめまいを感じるため、できるだけ動かない。めまいは昼間が比較的少なく、朝夕に悪化した。頭痛の方は、温かいタオルを首筋にあてがってもらったり、首をもんでもらったりすると楽になることが分かった。

 飛鳥さんの中には(このままずっと治らないかも)という恐怖心があったため、さらに3ヵ所の病院を回り、診てもらったがいずれも「異常なし」。

 ただ、あまりにもつらそうにしていたため、3軒目の病院の医師が、大学病院のめまい外来を紹介してくれて、受診することになった。

 最初に倒れた日から3週間後、飛鳥さんは車いすに乗せられ、博さんに付き添われて、その病院を訪れた。

めまいで倒れる恐怖が
負のスパイラルを引き起こす

「『恐怖性姿勢めまい(PPV)』ですね。いわゆる恐怖症の一種です。最初に良性発作性頭位めまい症を発症し、転びそうになりましたよね。その時の恐怖から、また倒れそうになるのが怖くて動けなくなることがあるのです。すると、あなたのように寝て過ごすことが多くなり、機能障害に陥った三半規管の回復が遅れ、さらに体調が悪くなり、自律神経系や筋骨格系の機能が低下して動けなくなるという負のスパイラルに陥って、車いすの生活や寝たきり生活になってしまった方が、当院には数多く来院されます」

「そんなに多いんですか。でも、ほかの病院では原因不明と言われました」

 意外そうに聞き返した。