在職老齢年金
働くと年金が減る「在職老齢年金制度」は時代に逆行した制度といえます Photo:PIXTA

働くと年金が減る「在職老齢年金」という制度の適用範囲を縮小することが検討されているようだ。しかし、「人生100年時代」に高齢者の労働意欲を本当に高めるためには、適用範囲の縮小ではなく、制度自体を廃止すべきである。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

在職老齢年金制度で
所得が一定以上の高齢者は年金が減額

 在職老齢年金は、サラリーマン(男女を問わず、公務員等も含む。以下同様)が加入する老齢厚生年金(公的年金の2階部分と呼ばれるもの)の受給者が対象になる制度で、自営業者などには無関係なので、本稿でも対象をサラリーマンに絞って記すこととする。

 この制度は、大ざっぱに言えば「65歳までは、給料プラス年金が月額28万円を超えたら、超えた分の半分を年金から減額する」「65歳からは、給料プラス年金が月額47万円を超えたら、超えた分の半分を年金から減額する」ものである。

 そして、限られた年金の原資を本当に必要な人に分配しよう、という趣旨で作られたものなのだろう。それ自体は理解できるが、後述のように弊害が多いので、廃止すべきだ。

厚労省は「月収62万円超」への縮小を検討
財務省は制度の縮小・撤廃に慎重か

 人生100年時代を迎えつつある今、「高齢者にも働いて年金保険料や税金を納めてもらい、年金の受給開始をできるだけ待ってもらおう」というのが時代の流れである。

 そこで、政府が6月に閣議決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)には、在職老齢年金を「将来的な制度の廃止も展望しつつ、速やかに見直す」と明記された。

 しかしこのたび、厚生労働省は在職老齢年金について、収入基準を引き上げて適用対象の人数を減らす方向で検討を始めた。年齢にかかわらず、月収62万円を基準とする模様である。