しかし、監視カメラが導入されてから、これまでのように勝手に駐車できなくなった。無理に駐車しようとすると、監視カメラがその一部始終を記録しており、交通違反になってしまうからだ。そうなると罰金だけではなく、多くの交通違反切符も切られてしまう。だから、駐車スペースがないことを確認したタクシーの運転手さんは、大人しく他のエリアにある大衆食堂へ向かうしかなくなったというわけだ。

タクシー運転手が
大喜びしたワケは…

 私と出会った運転手さんも、この日、いつも利用する大衆食堂周辺では、駐車スペースが見つからなかったそうだ。だからいっそのこと、遠く離れた浦東エリア、しかも空港に近い大衆食堂へ行こうとしていた。

 彼はこれまでの経験則に従い、タクシーを呼ぶアプリに浦東空港を走行方向として入力し、その方向へ移動しようとする客を拾いやすいように工夫していた。案の定、走り出したら、すぐにその方向へ行こうとしている私がアプリを通してこのタクシーを拾ったのだ。

 移動距離が長いと、乗ってくれる客がいなければ、発生したコストは運転手さんの自己負担となり、懐が痛む。しかし、その日はタイミングよく私がそのタクシーに乗ったから、走行コストの負担に対する心配はなくなった。だから運転手さんが、前述のように喜んだのだ。

 運転手さんの話を聞きながら、私は監視カメラの功罪を色々と考えさせられた。個としての監視カメラは、それほどの威力を持たない。今では、日々進化する顔認証システムと、ディープ・ラーニング技術に支えられたAIがリンクして、大きな監視ネットワークが形成されている。その威力は、驚くべきものへと進化しているのだ。

 その監視カメラと顔認証システムに象徴される監視ネットワークが存在することにより、これまで都市部によく見られた違法駐車現象が大幅に改善された。監視カメラと顔認証システムの威力を、国民はよく理解しているからだ。

 中国国民の多くは、昨年、上海に近い浙江省の地方都市・嘉興市で行われた香港俳優ジャッキー・チュンのコンサート会場で、3人の逃亡犯が相次いで逮捕されたニュースを知っているだろう。