私がこの記事を書いている4月の第3週は、アメリカで主要企業の1~3月期の決算発表が本格化する。特に注目が集まっているのが、やはり大手金融機関の業績内容だ。16日にJPモルガン、17日にメリルリンチ、18日にシティグループが決算を発表する。
14日、一足先に決算発表を行った米大手銀行ワコビアは、住宅融資関連で48億ドルの巨額損失を計上し、同時に70億ドルの増資をセットで発表した。これに対し、ニューヨーク市場は反応薄で、特に材料視されなかったようだ。今後も金融機関による自主的な資本増強の動きは加速するものと思われ、一時の最悪の状況からみれば、随分センチメントは改善したといえる。
悪材料はすでに織り込み済み、
今年後半から回復に向かう!
今回、アメリカの1~3月決算が相当悪くなるだろうということは市場の一致した見方であり、そうであるならば、株価はすでに相当悪材料を織り込んでいるはずである。2007年年8月から市場を襲ったサブプライムショックは、ヨーロッパや中国、日本など世界の金融機関に拡大し、サブプライム関連証券の暴落、住宅価格の下落、企業業績の悪化、失業率の上昇、投資銀行の実質破綻、個人消費への影響と、すそ野をどんどん拡大してきたが、これらは株価下落の過程ですでに相当織り込まれたはずだ。
気になるのは、3月のアメリカ消費者物価指数(CPI)がコア指数で前年同期比2.4%上昇しており、景気後退とインフレが同時に進むスタグフレーションに陥るのではないかということだが、決算発表をしたコカ・コーラやインテルが海外での売り上げを予想以上に伸ばしていることから、ドル安の恩恵と大幅な金融緩和によって、アメリカ経済はバーナンキ議長の筋書き通り、今年後半から回復向かうのではないだろうか。
市場の経験則に照らせば、相場は半年先を見て動くというが、もしその通りであれば、いよいよ後半からの回復を見越して不景気の株高を期待したいものである。ここのところニューヨークも東京市場も、2連騰、3連騰するケースが増えてきた、市場には確実に三寒四温の春が近づいているように思う。
なぜ市場は不景気の株高に向かうのか
アメリカ経済の指標が悪化の一途をたどり、スタグフレーションすら予想するエコノミストが大半なのに、なぜ株高になるのかを説明しよう。
今、世界の金融市場には、資源高の恩恵を受けて巨大に膨れ上がった投資(投機)マネーが行き場を探して滞留している。そして、目に見えないサブプライムという巨大な悪魔と戦うために、FRBをはじめヨーロッパの中央銀行は異常とも言える大量の資金供給と金融緩和を繰り返し行った。しかし、実体経済の悪化が現実のものとなってきた今、企業の資金需要や個人の借り手は一斉にいなくなってしまったのである。