Photo by Toshiaki Usami
「日本航空(JAL)は、驚愕したでしょうね」と語るのは、ある金融関係者。
7月3日、全日本空輸(ANA)が最大2110億円の公募増資を発表したが、その責任を担う主幹事証券会社に、野村証券の名前があったからだ。
JALは、今年9月に再上場を目指しているが、野村証券はこちらの主幹事証券も務めている。つまり、同じ分野の競合会社のファイナンスをかけ持ちしたのだ。
それだけではない。
ANAが増資を発表した日の夕方、都内でANA主催によるパーティが開かれた。会場には証券マン100人ほどが集まり、これから始まる増資2000億円ぶんの株の売り出しを景気付けるものだった。
実は、この会場で、証券会社側を代表してあいさつした野村証券の担当者は、直前までJAL再上場チームの担当者だったのだ。
JALは、再上場に向けて2010年10月から準備を進めてきた。JALに3500億円を出資する企業再生支援機構が昨年7月に国内主幹事証券会社5社を、今年1月に海外主幹事証券会社2社を選定した。
今年2月には、JAL幹部らが海外の投資家に説明に回っている。この野村証券の担当者は、海外投資家への説明にも同行し、6月まで頻繁にJAL本社に出入りしていた。
当然、JALの重要な経営情報を知る立場にあった。
その野村証券の担当者が、ANAの公募増資の担当になったと知り、JAL側が驚愕しないはずがない。「ライバル企業のファイナンスを同一人物が手がけることは、道義上あり得ない」(金融関係者)からだ。