延期の見直しが始まった
大学入試新テストの行方
2020年度から実施される「大学入試共通新テスト」、特に大学入試への英語民間試験の導入に対して、見直しの可能性が浮上してきた。
10月24日、野党は実施を延期する法案を衆院に提出した。同日、萩生田光一文科相は、テレビ番組で「身の丈に合わせて頑張って」と発言し、幅広い層の反発を受けた。萩生田文科相は、28日にこの発言を撤回して謝罪し、真意について「どのような環境下の受験生も自分の力を最大限発揮できるよう、自分の都合に合わせて適切な機会を」ということであったと釈明した。
この釈明は釈明になっていない。受験生各自の「自分の都合」が、居住地や家庭の資力という「環境」に左右されているという問題は、容認されたままだ。
とはいえ国会は、英語民間試験を延期する可能性に向かって、大きく動き始めた。来週の11月5日には、衆院文部科学委員会で参考人質疑が行われる。参考人として招致されるのは、推進を望む側からは7種類の英語民間試験の1つである「GTEC」を実施するベネッセおよび日本私立中学高等学校連合会、延期を望む側からは全国高等学校長協会および京都工繊大教授・羽藤由美氏の4者だ。
「高校3年生の親」を卒業したばかりのシングルマザーたちは、この成り行きに、今、どのような思いを抱いているだろうか。
ミユキさん(仮名・50代)は、夫のDVから逃れ、生活保護のもとで傷ついた心身を回復させ、就労して生活保護から脱却し、2人の子どもたちを育ててきた。現在、2番目の子どもは大学1年生だ。とはいえ、必要な費用の工面に、子どもたちが時に直面する困難に、自らの職業生活に、ミユキさんの日々の悩みは尽きない。
そして、自分の子どもたちが通過した大学入試について、「このまま英語民間試験が導入されてしまうと、受験を断念させられる親子が出てくるだろうと思います」と懸念する。