ANAのB777貨物専用機導入
タイミングは最悪だった

 さて、なぜANAだけが利益予想も下方修正することになったのか。両社の見通しに差を生んだ最も大きな要因が航空貨物事業である。JALは旅客機の一部を使って貨物を運ぶが、ANAは貨物専用機を持ち、航空貨物事業を大きく展開している。

 7月には国内航空会社で初めてボーイング777フレイター型機(貨物専用機)を導入し、アジア・中国~日本~米国線を就航した。従来機材より大型かつ燃費の良いB777フレイターを導入することで、輸送量を増強し、3国間貨物の獲得に力を入れるはずだった。

 タイミングは最悪だった。米中貿易摩擦により航空貨物マーケットが低迷しており、回復する見通しは立っていない。「輸送量は対前年比2割減少している。これまで好調だった電子部品などが低迷している」と福澤氏は言う。

 加えてANAは、期待の星であるLCC(ローコストキャリア)事業も振るわなかった。ANAグループ傘下のピーチ・アビエーションは、ANA(全日本空輸)に比べると韓国と香港路線の割合が多い。このため日韓関係の悪化や香港デモの影響をボディーブローのように受けた。台湾線も海外キャリアとの競争がいっそう激しくなった。加えて同じグループのLCCであるバニラエアとの統合に向け、一時的に運航便数が減少したため、旅客数・旅客収入共に前年同期を下回った。

 この中間期、明るい話としてはハワイ線があった。ANAは5月末、超大型機エアバスA380を成田~ホノルル線に投入し、長年JALの牙城であるハワイ市場で、マーケットシェアを奪取しようと鼻息が荒い。搭乗率(無償分も含む)は上期、絶好調で下期も10月で9割超、11月で9割弱を確保する。単価も大きく値崩れしていない。グループの旅行会社、ANAセールスがハワイツアーを積極的に販売したことから、旅行事業の営業利益率は劇的に改善してもいる。

 しかしこの華やかなトピックスも、その他の逆風によってかすんでしまった。

 ANAとJALの2社共通の課題は、20年春の羽田空港国際線拡大に向けた準備である。欧米長距離線をメーンに10便以上も増えるため、人件費、機材費、整備費を含めた費用が大幅増加する。羽田発着国際線は搭乗率・単価共に高いドル箱路線ではあるが、ひとたびイベントリスクにさらされれば、費用が先行し、逆回転する可能性もある。期待と不安を同時に抱え、緊張状態にある。

訂正 記事初出時より、以下の表現に改めさせていただきました。記事1ページ目リードと本文に3ヵ所ある「2019年3月期」を「2020年3月期」に訂正し、記事2ページ目第5段落:「かつての1%程度から10%超へと、」を削除しました(2019年11月1日12:00、ダイヤモンド編集部)