――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト
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経済が一部つまずいていても別の部分は順調な時には、成長バランスを維持するため、出遅れている部分を支えながら残りを抑えるのが理想的な政策だ。だが米連邦準備制度理事会(FRB)は、消費が引き続き旺盛ななかでさえ家計を支えざるを得ない一方、まれにみる世界経済の不透明感に直面した企業を助ける手段はほとんど全く持っていない。
ジェローム・パウエルFRB議長は事態を一段と複雑にした。貿易交渉の進捗(しんちょく)状況が企業の先行き不透明感に及ぼす影響に関する予想を、政策策定の根拠に織り込んだのだ。米経済が直面している問題の論理的帰結とはいえ、FRBは米中貿易協定を目指す政治家に不快なほど近づいた。
投資家が先週注目したのは利下げ自体よりも、(少なくとも景気が悪化しない限り)利下げは今回が最後だというシグナルだった。
しかし、米経済の違う部分への影響も重要だ。経済の支えを家計消費――特に、金利に敏感な住宅市場――に頼る状態は続けられない。確かに米国の家計は、危機後の節減を経て債務を増やす余地が十分ある。それに、新しい仕事がすぐに見つかるとの楽観が労働者のローンの追い風となっている。
だがこれは一時しのぎだ。企業が生産性を高め、新規の長期プロジェクト着手を決断するには、旺盛な個人消費が企業支出に波及する必要がある。