米国雇用統計は雇用者数の増加ペースが鈍化したが、労働需給のひっ迫が続き着実に賃上げが行われている状況だ。背景となる経済環境も内需を中心に底堅く推移しており、わずかではあるがインフレ加速の兆しも見られる。
他方、米中貿易摩擦や海外経済減速の影響が米国経済を下押しするリスクが高まりつつある。こうした中、現在FRBの金融政策への影響が大きいと見られる金融市場が、今後出てくる「データ」をどう解釈するかがより重要となっている。
8月米国雇用統計は雇用増加ペースが
鈍化するも労働需給はひっ迫
2019年8月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月から13.0万人増加と7月(同+15.9万人)から減速した。2019年に入ってから8月までの月平均増加数は15万人程度となっており、2018年が約22万人であったことを考えれば、雇用の増加ペースは鈍化していることがうかがえる。
ただし後述するように、追加的な労働供給力が低下しており、必ずしも雇用環境の悪化を示すものではないと考えられる。
業種別に見ると、製造業は前月差+0.3万人と緩慢な増加ペースが続いた。輸送機械や電子機器が緩慢な増加に留まる中、一般機械が2ヵ月連続で減少した。米国では設備投資需要が軟調になっており、雇用にも影響が及び始めた可能性がある。
また、民間サービス部門は、同+8.4万人と3ヵ月ぶりに10万人を割り込んだ。臨時雇用や宿泊・飲食など雇用の拡大が見られた業種もあるが、教育・医療や小売などが全体を押し下げた。