例えば、米国との関係悪化が懸念される産油国の一つは、「石油代金はデジタル人民元で払ってもらえば結構。デジタル人民元を外貨準備として持つことにする」と言いだすかもしれない。

 そうなると、デジタル人民元さえ持っていれば石油が輸入できるので、中国に石炭等々を輸出する国の中にも代金をデジタル人民元で受け取る国が出てきてもおかしくない。中国からの援助をデジタル人民元で受けて、それで石油を輸入する国もあらわれるだろう。

 個人レベルでも企業レベルでも、デジタル人民元を持ち、取引に使う人が増える可能性もある。

 世界の中にはインフレがひどいなどの理由で「自国通貨より人民元の方がはるかにマシだ」と考えている国民も多い。そして、そうした国の中には、米国政府とは関係が悪化している一方で、中国政府とは関係が良好という国も多い。

 決済のコスト次第であるが、そうした人々は、日常取引にデジタル人民元を使うようになる可能性は大いにある。今でも途上国に行くと日常の買い物に米ドル紙幣が使われていることがあるが、それがデジタル人民元になるイメージだ。

 そうした動きの総決算として、米国とは関係が悪化しているものの、中国とは良好な関係を築いている国々の間では、貿易も融資も投資も資金決済も、米ドルではなくデジタル人民元で行われることも考えられる。

デジタル人民元の台頭で
「世界の分断」が加速する恐れも

 米国と中国は、単なる貿易戦争を繰り広げているのではない。覇権を懸けた「冷戦」をしようとしている。米国は、「中国が不正な手段で実力を付け、米国の覇権を脅かすまでに成長してきた。今のうちに叩き潰しておかなければ自分がたたきつぶされてしまう」という危機感から、「中国封じ込め」ともいえるような動きを見せ始めている。