地銀と証券の接近が
「過渡的」である二つの理由

 さて、地銀と証券会社の接近について、一定の合理性があるが、過渡的な形だろうと冒頭で述べた。

 その理由は二つある。

 一つには、例えば、SBIと提携した福島銀行の預金者にとって、両社がつくる証券子会社と取引するよりは、預金は福島銀行に置きながら、証券取引は証券子会社とではなくSBIホールディングス傘下のSBI証券と直接取引する方が、はるかに合理的であるだろうからだ。この状況はネット証券としてSBI証券が優秀であればあるほど動かし難い。

 高齢者を中心に、当面「生身の人間」のアドバイスを受けたい人はいるにちがいないが、そのコストについては競争が働くはずだし、顧客側の金融リテラシーが高まると人間のコストは賄えなくなる。

 加えて、銀行・証券の別を問わず、人間が行う社内の仕事や対外的なサービスが、機械とプログラムに置き換えられる流れには抗しがたい。ネット証券と提携した地銀にあっても、「生身の人間」へのニーズはどんどん減るはずだ。かつて資産だった「人」が、今や大きな負債となりつつある銀行にとって、未来のビジネス環境は明るくない。この事情をネット証券側ではよく分かっているはずだ。

 もちろん、現実のビジネスにあって、時間はいきなり未来に進むわけではない。ネット証券と地銀の連携には、期間限定ではあるが、一定の合理性があると思う。また、ビジネスを継続する中で、今見えている状況と異なるチャンスが生じることもあり得る。SBIの試みに敬意を表したい。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

SBIと福島銀の資本・業務提携が「期間限定なら合理的」といえる理由この連載の著者、山崎さんと直接会って話ができる!お金について一緒に勉強したい人のためのオンラインサロンが誕生しました。詳しくはこちら