トランプ政権は、自由で開かれたインド太平洋戦略を掲げ、それについては日本政府と足並みをそろえようとしています。しかし今回の日韓関係の悪化によって、安全保障上の弱点が生まれています。これは、明らかにトランプ政権の戦略的な失敗です。
トランプ米大統領は
同盟関係に関心がない
――トランプ大統領は日韓問題についてあまり積極的に発言しません。
トランプ政権は同盟関係を重視していない。その価値を分かっていないのです。ですから、日韓という同盟国同士の関係には関心がないのです。トランプ氏は文氏と同じく、北朝鮮の金正恩労働党委員長との首脳会談しか考えていない面があります。一方で北朝鮮の狙いは、韓国の孤立です。日韓関係が悪化すれば、韓国は次第に孤立する。
またトランプ氏は在韓米軍の撤退を考えています。シンガポールでの金委員長との会談時も、記者会見でそう明言していました。在韓米軍の撤退は日本にとっても最悪のシナリオです。空白が生まれ、北朝鮮の脅威がさらに増す。ですから日韓が協働して米国に対し、米軍撤退による懸念を訴える必要があります。
ジミー・カーター氏は1970年代、在韓米軍撤退を公約に掲げて大統領選に勝利しました。それが実現できなかった最大の理由は、日本政府の反対でした。前方展開(友好国に駐留軍を配置し、敵対関係にある国家を威圧・抑止する軍事戦略)を支持する元高官として、私が日韓に一番お願いしたいことは、両国が一緒になって日米韓同盟の強さを中国と北朝鮮に示すことです。そして米議会に前方展開の必要性を説明することです。
日韓関係の悪化に伴う東アジアの空白を一番利用しているのは、北朝鮮と中国です。ですが、もう一つの敵も利用していることを忘れてはいけません。それは、米国国内の孤立主義者です。ですから米国政治の力関係も、今の日韓関係の悪化によって、危うくなりつつあるのです。