来年4月の韓国国会の総選挙まで問題を後回しにできれば、韓国側はもう少し冷静に、日本の問題を考えられるかもしれない。歴史問題そのものの解決にはならなくても、時間を稼いで冷静に議論しましょうという考え方です。完璧ではないですが、そうした方法しかないのではありませんか。
――日韓の関係悪化について、米国ではどのように捉えられているのでしょうか。
1965年の国交正常化以降、日韓関係は何度も悪化してきましたが、今回は特に深刻です。背景には、文在寅(ムン・ジェイン)政権によるポピュリズム的な政治手法や、韓国の大法院(最高裁判所)判決(元徴用工への賠償を命じた)があります。ワシントンでは今回の問題について、日本が端緒と考えている人は少ない。最高裁の政治的判断により、韓国が火を点けた形です。韓国政府は独立した司法判断と説明していますが、米国では説得力を持って受け止められていません。
日本の輸出管理強化は
法的に○でも戦略的には×
しかしその一方で、日本による輸出管理強化は間違いなくタイミングを見計らった報復措置でした。日本が問題を複雑にしたのです。米ワシントンの国際関係の専門家たちは、当初は9割方韓国が悪いという意見でした。それが輸出管理強化によって、6割ぐらい韓国、4割は日本が悪いとなりました。
日本は確かに韓国よりも国力があります。技術、政治、経済、米国との関係のいずれも、日本の方が韓国より強い基盤を持っている。日本側は輸出品目という圧倒的なレバレッジ(てこ)を持っているわけで、安倍晋三政権は日韓の力関係をうまく分析して行動しました。しかし日韓の歴史を考えると、韓国が日本に対して降伏するというシナリオは考えられません。韓国がさらに報復するのは明らかでした。
輸出管理における日本の措置は、WTO(世界貿易機関)などの国際的な取り決めの違反にはなりません。韓国の輸出管理制度に問題があるのは、多くの専門家が認識していたことです。それでも「日本はここまでやらなくてもよかった」との意見があります。法律的には正しくても、戦略的にはよくないのです。日韓関係の悪化を、中国や北朝鮮が利用するからです。それは、米国にとっても国益にダメージをもたらす状態です。