マイケル・グリーン氏 Michael Jonathan Green/1961年生まれ、米国ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院博士課程修了。米国国防長官室アジア太平洋局上級顧問など経て、2001年に米国国家安全保障会議(NSC)でアジア部長。04年~05年に同アジア担当大統領特別補佐官兼上級アジア部長。現在は戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長など担当。著書に、『日米同盟-米国の戦略』(勁草書房)、『日中もし戦わば』(文春新書、共著)。

 日本は米国にとって長年にわたる同盟国です。また韓国も安全保障上の重要な同盟国です。こういった中、中国の習近平国家主席は2014年のアジア信頼醸成措置会議(CICA)首脳会議の基調演説で、「アジアの安全はアジアの人民が守らなければならない」と訴えました。つまり、米国がアジアの安全保障関係に干渉していることを批判し、中国主導で新たにアジアの安保秩序を構築する必要があると訴えていたわけです。

 今回の日韓関係を受け、中国は王毅外相が8月の日中韓外相会議で、「日韓関係の復活に貢献する」という立場を取りました。これに対し、米国は何も行わなかった。米国は本来、日米韓の関係を主導するべき立場なのに、それに中国が取って代わってしまった。恥ずかしいことです。

 7月に中国はロシアと共同で、東シナ海上空での合同警戒監視を実施しました。こうした動きを抑止するためには本来、日米韓が一体となって中国に圧力をかけるのが正しい戦略です。ところが日韓はそういう戦略的な行動をとる状態ではありませんでした。

日韓の関係悪化で
米国が一番損する理由

 最近ワシントンで話題となっているのは、「日韓関係悪化で一番失敗したのはトランプ政権ではないか」ということです。

 こうした空白を作った原因は、トランプ政権にあります。私は過去にジョージ・W・ブッシュ政権で働きましたが(米国家安全保障会議スタッフとして日本・朝鮮担当部長やアジア上級部長を歴任)、ブッシュ政権やオバマ政権、クリントン政権などであれば、これほどまでの日韓関係悪化を許さず、内政干渉と言われようがトップレベルで歯止めをかけていたはずです。

 例えば、日本が輸出管理で報復措置を取る前に、米政府は大統領や国防長官のレベルで「米国の国益や外交上、問題がある」とのメッセージを発することが可能でした。日韓の歴史問題の解決こそできなくても、関係悪化に歯止めをかけられたはずです。にもかかわらず韓国の最高裁判決、日本の報復措置、そして韓国のGSOMIA破棄の各段階で、米国は歯止めをかけようとしませんでした。