第3章

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 ロバートの言葉は正しかった。

 森嶋は翌朝のテレビ放送を見て声を上げそうになった。

 地震と富士山噴火の予知情報は完全に独り歩きを始めている。すでに世界中に様々な言語で増殖を続けているのだ。驚いたことにその情報量はすでに数百倍、いやそれ以上に膨れ上がっていた。

 関連情報が加えられ、加工され、過去の地震や火山噴火の動画までもが載っている。そして反論と支持する書き込みが、やはり世界に流れているのだ。敵はタネをまいた。あとは勝手に育っていく。ロバートの言葉が浮かんだ。

 株価も為替レートも大きく下がっている。市場はやはり真実よりリスクを嫌うのだ。危険を察したレミングの大群のように、リスクを回避するもっとも安易な方向に走り始めている。その先に何が待っているかも知らずに。

 携帯電話が鳴っている。

〈昨日はどこに連れてってもらったのよ。ボスのお気に入りさん。携帯電話の電源まで切って〉

 優美子の皮肉を込めた声が聞こえてくる。

「僕はしょせんカバン持ちなんだ。村津さんの業者周りについてっただけだ」

 この言葉にウソはないはずだ。しかし優美子を納得させるものでもない。

〈みんなの不満もそろそろ限界よ。私たちはいつも蚊帳の外に置かれてる。あなただけが、なにが起こってるのか知っている。これって、やはりおかしいわよね〉

 冷静に畳みかけてくる優美子の言葉に森嶋には返す言葉がなかった。たしかにその通りなのだ。