村津の通勤ルートは知っている。

 地下鉄の出口で10分ほど立っていると、村津の姿が現われた。

 森嶋は村津の横に並んで歩いた。

「話があります。歩きながらでけっこうです」

 村津は頷いて歩いていく。そして交差点横のコーヒーショップに入って行く。

 森嶋も付いて入った。

「今日、長谷川さんが来る。早苗たちも一緒だ」

 窓際のスツールに腰掛けるなり、村津が言った。

「えっ?」

「そろそろ、グループ全員に新首都の全容を把握してもらおうと思っている」

「しかし昨日の話だと……」

「隠していてもいずれは漏れる。きみも話したくてうずうずしてるんだろ。今日もその話じゃないのか」

「総理の許可が出たんですか」

「あの模型については総理も知らないとは言わなかったかね。一つの都市計画として紹介する。こういう形の都市、そして首都があってもいいとね。誰がどこで何をしゃべろうか関係ない」

「では、総理にはいつ話すのですか」

「そんなに先の話でもない。この状況だ。近いうちに、会いたいと連絡が来るはずだ」

 確信を込めた言い方だった。