毎日、何気なく、お風呂に入っていませんか? そうだとしたらもったいない! 「入り方次第でお風呂タイムは治療になる」と言うのは、自律神経や腸の研究の第一人者で「医者が教える長生きみそ汁」の著書もある小林弘幸先生(順天堂大学医学部教授)。
寝ても取れない日々の疲れや、肩こり・腰痛などの慢性的な痛みに、一生悩まされない体を作る、究極のお風呂の入り方を提案した新刊「医者が教える 小林式 お風呂健康法」をベースに、自律神経と腸に最大効率で働きかけるお風呂の入り方を解説します。

ベストセラー医師が語る!「疲れ」と「痛み」をなくす“小林式 お風呂健康法”とは?Photo: Adobe Stock

忙しすぎる毎日で唯一リセットできる場所

 私がお風呂の健康効果を意識するようになったのは、つい最近のことです。
 私は35歳で留学から帰ってきて、それから教授になるまでの12年間は、手術のことしか頭にありませんでした。言い方を変えると、手術のことさえ考えていれば、医師としての仕事を全うできました。

 ところが、最近は役割が増えました。診療はもちろん、研究、学生への指導、講演会、本の執筆などのほか、医師会の理事やスポーツ庁の参与としての務めなどもあります。忙しすぎて、常に地に足がついていない感覚です。

 そんな日々において、唯一心休まる場所がお風呂です。
 お風呂に入っているときが一番、俗世間から離れられるというか、本当の自分に戻って、 リセットできるような気がします。だから、時間がなくてお風呂に入れない日があると、調子が狂ってしまいます。

 しかし、この、
「お風呂に入らないと、調子が狂う」
という気づきが、私に新しい発見をもたらしました。
 調子の悪さ、すなわち、だるい、痛い、やる気が出ないなどの不定愁訴は、私が研究をしている自律神経と深いかかわりがあるからです。
「自律神経という観点から、お風呂の健康効果にアプローチできないだろうか? 自律神経のバランスを整えるお風呂の入り方を追求すれば、多くの人が悩まされている、慢性的な疲れや痛みを改善できるに違いない」。
 その考えを元に、執筆したのが、「医者が教える 小林式 お風呂健康法」です。

 実際、お風呂の健康効果は医学会でも近年注目を集めており、「毎日入浴する人は、そうでない人に比べて要介護になるリスクが3割低い」「週に5回以上入浴する人は、心臓や血管の状態がよい」など、さまざまな研究結果が報告されています。

 日本人はもともとお風呂が大好きで、お風呂が体にいいことを体感として知っています。それにもかかわらず、その素晴らしい健康効果を最大限に享受しようとしていません。
 しかし、それは非常にもったいないことです。せっかく毎日お風呂に入っているのだから、よりよい方法を採用しない手はないでしょう。

 そこで私は、本書で、医学的見地に基づき「究極の入浴法」を検証しました。
「究極の入浴法」というのは、健康効果を最大限に高める入浴法のことです。もちろん、「熱いお湯につかるのはダメ」「水分補給をしっかり」というようなことは、みなさんもすでにご承知だと思います。しかし、それは、命を守るという必要最低限のものであり、「どうすればもっと健康になれるか?」という積極的な視点によるものだとは言えません。
 私がこのたび考案した「究極の入浴法」は、より能動的で総体的なもの。
「お風呂に入っている間だけ気持ちがいい」のではなく、「お風呂に入っているときはもちろん、お風呂に入っていないときも、疲れや痛みがない体」を目指すものです。