しかも、東芝テックには長年、モノ言う株主から指摘されてきた「突っ込みどころ」がある。

 実は、オフィス用のプリンタ、複合機を扱うプリンティング事業を持っており、その成長が期待できないのだ。

 東芝の株主である米ファンドのキング・ストリート・キャピタル・マネージメントは18年、東芝テックのプリンティング事業について「売却を含めたあらゆるオプションの検証」を東芝に求めた。

 同ファンドは要求の根拠として、プリンティング事業の市場が年間2%ずつ縮小すると見られることや、プリンタやFAXなどの機能を持つ複合機が市場シェア11位にとどまること、そして「POSレジ事業とのシナジー効果が欠如している」ことを挙げた。

 実際に、プリンティング事業は競合他社との価格競争や米中市場の減速が直撃し、2019年4~9月期の営業利益は1.9%まで下がっている。プリンティング事業を売却するにも、キヤノンなどの競合他社も市場の縮小に苦しむ中で前向きなM&A(合併・買収)が成立しにくいのが現状だ。

 これらの要因から、ある東芝幹部は、「今のところ完全子会社化にはネガティブだ。ポジティブなら今回取り込んでいた」と打ち明ける。

 東芝の平田政善CFO(最高財務責任者)は「(親子上場は解消すべきという)政府方針があるので、どこかで最終判断をする」と明言している。

 完全子会社化か、売却か──。期限は刻一刻と迫っている。