東芝が、親子上場を解消するため、上場子会社4社のうち3社の完全子会社化を決めた。残るPOSレジ世界最大手の東芝テックは、消費データの活用で「大化け」が期待される。その東芝テックが上場維持のまま放置され、売却も検討される理由とは。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
東芝テックを統合しない経営判断に相次ぐ疑問
「デジタルソリューションを強化する東芝と最もシナジーがあるのが、POSレジ世界首位の東芝テックだ。その会社を完全子会社化しないのは、有力株主が同意していないといった特別な事情があるとしか思えない」
東芝テック以外の上場子会社3社を株式公開買い付け(TOB)で完全子会社化する東芝の経営判断について、ある証券アナリストは首を傾げる。
今回、東芝が完全子会社化するのは発電所などを建設する東芝プラントシステム、半導体製造装置のニューフレアテクノロジー、産業用電機の西芝電機の上場子会社3社だ。
親子上場の解消に踏み切る理由は、親会社と子会社の少数株主との間で利益相反の恐れがあるから。政府や市場関係者を中心に企業統治上の問題を指摘する声が高まっていた。
それに加えて、東芝は投資対効果の高さも強調する。完全統合による事業シナジーや固定費削減によって、東芝の1株当たり利益(EPS)は、2021年3月期に21%改善、株主資本利益率(ROE)は2%改善する計画だ(3社を取り込まなかった場合の同期見込みとの比較)。
車谷暢昭会長兼CEO(最高経営責任者)は3社の完全子会社化を発表した11月13日の会見で、「自社株買いより魅力的で投資効果が高い。シナジーを最大化したい」と意気込んだ。
ところが、会見では「シナジーで判断するなら東芝テックこそ本体に取り込むべきでは」という疑問の声が相次いだのである。