つまりPRのターゲットは、深刻な闘病に直面する家族ではなく、「その他大勢の一般市民」であって、そのターゲット層に啓蒙活動を行う場合は、お笑いタレントを起用するのも常道だし、笑いの要素をクリエイターが入れ込むことも理解できます。

 にもかかわらず、なぜ批判を招いたのか。ここが難しいところで、「笑い」というものは本質的に誰かを必ず傷つけます。どんな人でもTPOによっては、お笑いを不謹慎に感じるものだからです。病院を舞台にしたコメディ映画も、お医者さんと患者のコントも、真剣に死と闘っている人が不快な場面設定だと感じることはあるでしょう。

クレームはもっともだが
本質的なミスは他にある

 だから、支援団体の代表がこのポスターを見て「『がん=死』を連想させるようなデザイン」と感じたこと自体は、誰も否定できません。そう感じてしまう人は、必ずいるわけですから。

 しかし、「笑いからすぐに不謹慎さを連想するような抗議」が相次いでいる現状は、社会にとっても闘病者にとってもマイナスだとしか、私には思えません。病気や人生の困難を乗り越えるために笑いは実に有効なものであり、かつ、たくさんのお笑い芸人さんがボランティアとして、そうした人たちを励ます活動をしていることも知られています。私は笑い声が絶えない病室のほうが、他の患者さんや家族の気持ちを考えて笑ってはいけない病室よりも、好ましく感じます。

 おそらく、厚労省が犯した最大のミスは、「患者や遺族を傷つける内容である」という抗議を受け入れ、ポスターの回収を判断した結果、現場に「お笑い禁止」のムードを広めてしまった、ということではないでしょうか。

 アングリー(怒り)がスマイル(笑い)を殺す――。今回の騒動に後味の悪さを感じたのは、私だけでしょうか。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)