16万部を突破したデビュー作『転職の思考法』で、「このまま今の会社にいてもいいのか?」というビジネスパーソンのモヤモヤに答えを出し、「転職は悪」という既成概念を打ち破った北野唯我氏。いま、人材マーケット最注目の論客であり、実務家だ。
その北野氏が、今回選んだテーマは、「組織」。自身初の本格経営書『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』では「ウチの会社、何かがおかしい?」という誰もが一度は抱いたことがある疑問を科学的、構造的に分析し、鮮やかに答えを出している。
なぜ、あなたの職場は今日も息苦しいのか。具体的に、何をすれば「オープネスが高い」組織がつくれるのか。明日、少しでも楽しく出社するために、一人ひとりができることは何か。本連載では、これらの疑問について、独自の理論とデータから解説する。
前回の記事では、職場の空気が企業の業績にとって重要な指標となってきている構造的な理由を解説してきました。
『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』の中に、面白いデータがあります。下の図は、平成の30年間で時価総額を最も大きく伸ばした上位10社と、反対に時価総額を最も大きく減らした下位10社について、比較して並べたもの。ちなみに、この20社は『日本経済新聞』の記事(「平成の30年間 時価総額の増加 トヨタがトップ」2019年4月27日)と同じものを利用しています。
【平成30年間で最も時価総額を増やした企業10社】トヨタ自動車、キーエンス、日本電産、ソニー、任天堂、武田薬品工業、信越化学工業、ダイキン工業、本田技研工業、村田製作所 【平成30年間で最も時価総額を減らした企業10社】NTT、東京電力HD、野村HD、日本製鉄、新生銀行、関西電力、東京ガス、パナソニック、中部電力、大和証券グループ本社
両者にはどんな差があるでしょうか?
結論を言うと、図のグレーで色を付けた部分で、両者のスコアに差があります。
具体的には、時価総額を大きく伸ばした企業では、
・「風通しの良さ」
・「20代の成長環境」
・「社員の士気」
といった項目で数値が高いことがわかります。
つまり、時価総額を大きく伸ばしている企業は、「職場の空気」の項目での満足度が高く、反対に時価総額を減らした企業はこれらが低いのです。
参考までに、この傾向は「時価総額を減らした企業」のうち、とくに顕著に数が多い「電力・ガス業界の企業」を除いても同じになります。