16万部を突破したデビュー作『転職の思考法』で、「このまま今の会社にいてもいいのか?」というビジネスパーソンのモヤモヤに答えを出し、「転職は悪」という既成概念を打ち破った北野唯我氏。いま、人材マーケット最注目の論客であり、実務家だ。

その北野氏が、今回選んだテーマは、「組織」。自身初の本格経営書『OPENNESS  職場の「空気」が結果を決める』では「ウチの会社、何かがおかしい?」という誰もが一度は抱いたことがある疑問を科学的、構造的に分析し、鮮やかに答えを出している。
なぜ、あなたの職場は今日も息苦しいのか。具体的に、何をすれば「オープネスが高い」組織がつくれるのか。明日、少しでも楽しく出社するために、一人ひとりができることは何か。本連載では、これらの疑問について、独自の理論とデータから解説する。

Photo: Adobe Stock

 本連載では、「職場の空気」が企業の業績にとって重要な指標となってきている構造的な理由、そして組織にとって重要なオープネスを邪魔する罠について、解説してきました。
 
「職場の満足度」が経営課題になる。
 この事実を確かめるためには、もう1つ、あきらかにしないといけないことがあります。それは、「改善できる余地」が、どこにあるのか? です。現実的な話、経営資源は限られています。だとしたら、どこに改善の余地があり、優先順位はどうつけるべきなのか?    それをあきらかにしない限り、実践には活かせません。

 そのキーワードは「期待値とのギャップ」です。

 言わずもがなですが、人は職場に対して、何かしらの「期待値」をもっています。たとえば、「給料はこれぐらいほしい」「上司はこうあってほしい」「もっと承認してほしい」などこの期待値に対して、現実が下回れば不満になり、上回れば満足に変わる。そして、すべての組織的問題は、現実がこの期待値を下回ることで勃発するのです。

求められる期待値にはバラツキがある

 なぜ大量退職するのか、なぜ従業員は思っている以上にパフォーマンスを出してくれないのか。経営者側が感じるこうした疑問の答えを端的に言えば、従業員が求める期待値に達していない環境要因があるからです。
 ただし、やっかいなことに、人が求めるバー(期待値)は、項目によってかなりバラツキがあります。さらに、個人差もあります。「定時では絶対帰りたいけれど、給与はまあまあでいい」という人もいれば、反対に「とにかく給与がほしい」という人もいます。そして、企業によっても「求められている項目」にはバラツキがあります。

 では、どうすればいいのか? 論理的に考えれば、2つの方向性があります。
①期待値を適切な値に調整すること
②実態を改善すること

 1つめは、期待値そのものを調整する方向です。たとえば、従業員があまりに高すぎる期待値をもっている場合、そもそも何をしようとも満足させることはできません。この場合、期待値の調整が必須になります。
 わかりやすく言うと、「年収1億円の20代の人と結婚したい」と思っていても、そもそもそんな人はごく少数のため、期待値を下げるのが現実的でしょう? ということです。これが「期待値そのものを調整する」という意味です。

 そしてもう1つは、正攻法で実態を改善していく方法です。職場環境のどこに課題があるのか? では、これを踏まえて、課題の所在地をデータで見ていきます。『OPENNESS  職場の「空気」が結果を決める』で約2400社のデータを分析した結果、e-NPS(従業員満足度を示す指標)との相関係数が高いものは、次の項目でした。

・待遇面の満足度(0.715)
・人材の長期育成(0.611)
・風通しの良さ(0.608)
・法令遵守意識(0.530)
・社員の士気(0.479)

 この5つは「職場の満足度にとって重要度が高い」ということを示しています。