16万部を突破したデビュー作『転職の思考法』で、「このまま今の会社にいてもいいのか?」というビジネスパーソンのモヤモヤに答えを出し、「転職は悪」という既成概念を打ち破った北野唯我氏。いま、人材マーケット最注目の論客であり、実務家だ。
その北野氏が、今回選んだテーマは、「組織」。自身初の本格経営書『OPENNESS  職場の「空気」が結果を決める』では「ウチの会社、何かがおかしい?」という誰もが一度は抱いたことがある疑問を科学的、構造的に分析し、鮮やかに答えを出している。
なぜ、あなたの職場は今日も息苦しいのか。具体的に、何をすれば「オープネスが高い」組織がつくれるのか。明日、少しでも楽しく出社するために、一人ひとりができることは何か。本連載では、これらの疑問について、独自の理論とデータから解説する。

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「言行不一致」が人の心を蝕む

 「ウチの会社はどうせ変わらないでしょ」。

 この諦めの声は、私がこれまで所属してきた大企業でも、コンサルタントとしてサポートしてきた企業でも、あらゆる場所で密かに聞こえてくる雑談、愚痴でした。それは諦めのようなものに近く、秘密裏に話されることも多い。
 本来であれば職場はひとりひとりが作っていくもの。それにもかかわらず、なぜか多くの職場には、自分たちの現状に異論を唱えたり変えようとすることに対して、「なんとなく言いづらい雰囲気」が蔓延しています。

 では、なぜ、「言いづらい雰囲気」は生まれるのでしょうか? オープネス(=開放性)が低くなるのでしょうか?
 今回は、その理由の1つである「ダブルバインド」について見ていきます。

 ダブルバインド……?(耳慣れない横文字!です)

 ダブルバインドとは、直訳すると「二重拘束」。人間が相手から異なる2つの命令をされ、それらの間で心に葛藤や矛盾を抱えることによって、自由な意思決定ができない状態になってしまうことを指します。そして、十中八九、「意見がいいづらい職場」には、この組織のダブルバインドが発生しています。
  ダブルバインドは通常、家庭内コミュニケーションの場面で使われることが多い用語です。たとえば、親が子どもに「おいで」と(言語的に)言っておきながら、いざ子どもが近寄ってくると逆にドンと突き飛ばしてしまう。子どもからすると、呼びかけを無視すると怒られ、近寄っていっても拒絶される。子どもは次第にその矛盾から逃げられなくなり、疑心暗鬼になる。結果として、家庭外に出てもそのような世界であると認識し、他人に対しても同じように接してしまうようになるのです。

あなたの隣りで起こっている「ダブルバインド」

 ビジネスフィールドでも往々にして、これと同じ現象が発生しています。言い換えれば、「言語的に上司が言っていることと、非言語的に上司が言っていること」が違うケースです。

 みなさんも一度は、こういう経験はないでしょうか?(きっとあるはずです!)

・言葉上は「若手を尊重する組織への移行」と言いながら、実際にはまったく権限委譲が行われない
・社長は「人が大事です」と言いながら、実際にそういう施策を提案されると即却下する
・上司が「自由にやってほしい」と口では言いながらも、何かあると強烈なマイクロマネジメントを行う
・上司から「自由に意見を言っていいよ」と言われるが、実際に自由な意見を言うと、まったく歓迎されない
・「なんでも相談して」「質問はいつでも受け付けるよ」とリーダーが言いながら、実際には忙しくしており、メンバーが相談できない

 これらは「組織のダブルバインド」と呼ばれるものです。オープネス、すなわち職場の開放性を高めることは、「言うは易し、行うは難し」。ダブルバインドは、職場のあらゆる場所に蔓延しています。