糖質ゼロみりんが
「みりん」を名乗れない理由

 さらに、ローカーボ(低炭水化物)のイベントや専門レストランにも呼ばれるようになり、直接声を聞く機会も増えた。すると「みりんを料理に使いたいが、糖質が気になって使えない」「手頃な価格帯で糖質ゼロのみりんも出してほしい」と、顧客から切望されたという。

「もちろんラインアップは増やす予定でしたが、お客さんに『やってみます』と答えた以上、すぐに作らざるを得ない状況になりました(笑)。何より、みなさんの声を聞き、実生活で困っている人の悩みを解消することは、メーカーとしてチャレンジする意義があると感じたのも大きいです。即座に“糖質ゼロみりん”のプロジェクトが立ち上がりました。もともと新しいことに挑戦する土壌がある会社なので、フットワークは軽いですね」
 
 開発時には「糖質をゼロにすることよりも、もち米を使わずに本みりん特有の“コク”と“風味”を出すのが難しかった」と、竹山氏。それでも、長年培ったみりん作りの技術を駆使して何度も試作を行ったという。

「当社は、もともとみりん作りからはじまった会社なので、アイデアはたくさん蓄積されていました。詳しい製造工程は企業秘密ですが、通常の本みりんの3倍の手間をかけて作っています。逆をいえば、みりんの専業として120年間続けてきた、知恵と経験がなければ作れなかった商品。最終的に、当社の本みりんとほとんど同じ味覚バランス(*)を再現することができました」

 同社の集大成ともいえる、糖質ゼロのみりん。2年の時を経て販売までたどりついたものの、新たな壁がたちはだかる。

「この商品は『みりん』ではなく『甘みとコクの糖質ゼロ』という名前で販売しています。実は、法令や各種の基準で定められた材料と作り方でなければ、商品名に『みりん』の文字を使うことができないんです。しかし『甘みとコクの糖質ゼロ』は、そのどれにも当てはまらない、まったく新しい調味料なんです。自称ですが、本みりん、みりん風調味料、みりんタイプ(醸造調味料)に次ぐ、第四のみりんといえます。最終的に『本みりんと同じように使える』という文言をパッケージに記載して販売することになりました」

(*)…味覚センサーによる甘み、うま味、塩味、酸味、苦味という5つの味覚要素のバランスを五角形のチャートに表したもので比較