まさに「巨星墜つ」の感がある――。日本が「世界の大国」の名を欲しいままにした1980年代に長期政権を担った、中曽根康弘元首相が死去した。中曽根氏は政界引退後も、日本の政治の在り方に警鐘を鳴らし続けた重鎮の1人である。ダイヤモンド編集部は、民主党政権で鳩山内閣が崩壊し、政治の混迷が深まる2010年6月、氏に単独インタビューを行った。激動の戦後、高度経済成長時代、バブル経済時代、そして平成の「失われた30年」を、一貫して政治の第一線から見つめ続けてきた中曽根氏が、日本人に遺そうとしたメッセージとは何か。当時、2回にわたって掲載したロングインタビューの全文を、まとめて再掲載する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 原 英次郎・小尾拓也、撮影/加藤昌人 *所属はインタビュー当時のもの)
混迷を続ける日本の政治
長期政権を担った元首相の危機感
――昨年、戦後初となる本格的な政権交代が起き、長年政権を担っていた自由民主党が下野して、民主党政権が誕生しました。しかし鳩山政権は、発足からわずか8カ月目で崩壊。混迷を続ける日本の政界に、二大政党制は本当に根付いたのでしょうか? 評価を聞かせてください。
二大政党制が本格的に根付いたとは、まだ言えません。民主党は政策が安定していないし、支持勢力の恒久性も確立されていないから。
政権をとった民主党も、復活を狙う自民党も、努力をしているのはわかります。ただ現実には、先の衆議院選挙によって2つの大きなブロックができただけの話であり、今の政治体制は、長期に続く国民の本当の意志の上にでき上がったものではない。
このような状態では、「第三極」の台頭もあり得ない話ではないでしょう。