我が国の2008年におけるCO2排出量は約11.4億トンで、政府は、2030年までに、30%強削減して7.4億トンにし、低炭素社会を構築しようと計画している。その過程には多くのビジネスチャンスがあると予想され、企業の関心も高く、費用の削減となる省エネに積極的に取り組んでいる。確かに、省エネと低炭素社会の構築は多くの点で重なるが、CO2を削減するための太陽光や風力発電の拡大は、必ずしも費用の削減にはならないかも知れない。

 このような費用の削減とはならない部分に対して、各企業がどのように取り組むのかについては必ずしも明確ではない。その理由の1つは、低炭素社会を実現するために、国や地方公共団体がどのように取り組むのかが必ずしも明らかになっておらず、全体像が見えないことにあると思われる。

 3月のこのコラムでも書いたように、低炭素社会は公共財であり、それを構築する際には、課税や補助金など、政府の役割が重要である。低炭素社会という大きな目標を掲げるのは政治の役割であるが、それを達成するためのロードマップを示すのもまた政府の仕事である。

 この低炭素社会へのロードマップは、技術開発のロードマップを基礎に、どのような条件の下で、いつ、その技術が採択されるか、そのために政府がどのような施策を行うかを示すものである。

3.11で変わった
エネルギー分野のCO2削減

 電力をはじめとするエネルギー分野は、我が国のCO2排出量の約1/3を排出しており、この分野でのCO2排出量の削減が重要である。10年6月に出た「エネルギー基本計画」の内容は、(原子力を含む)ゼロエミッション電源を現行の35%から2020年までに50%、30年までに70%にするというものであった。そのために、原子力発電所を増設し、その稼働率を現行の60%から20年までに85%、30年までに90%へと引き上げるという方針が打ち出された。

 3.11まではそれで良かったが、それ以後、情勢は大きくが変わっている。国民の意見も、当初は混乱していたが、原発依存度を順次下げていくという方向でまとまりつつある。