すなわち、ドイツでは、伝統的には失業給付が手厚く、解雇規制や有期雇用契約の制限などが厳しかったが、2000年代初めの第2期シュレーダー政権のもとで、本格的な労働市場改革が着手された。その基本的な理念は「福祉から就労へ」という発想であり、求職者が正当な理由なく就労を拒否した場合は制裁措置が課されるなど、求職者に対して就労義務の履行が強く要請されることになった。さらに、解雇制限法の規制緩和や失業給付の支給期間の短縮も行われ、労働市場の柔軟性は徐々に向上し、今日の経済復活と失業率低下につながっている。

 一方、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリアなどの南方諸国は取り組みが遅れてきた。これらの国では年金制度が手厚いほか、解雇規制が極めて厳しく、高い失業率が常態化してきた。

 こうした労働市場改革に象徴される構造改革の進捗における「南北格差」が、ユーロ危機の根本にあるのである。このようにみれば、ユーロ危機をユーロ解体でない形で収束させていくには、ユーロ共同債の発行や銀行同盟、財政統合などの金融・財政面での制度の統合を進めることに加え、「市場主義2.0」さらにその進化形である「市場主義3.0」に基づく国家モデルを改めて明示し、それに沿った形で労働市場改革、社会保障改革などを進めていくことが肝要といえよう。

(以上の議論については拙著『市場主義3.0』〈東洋経済新報社〉もご参照ください)