プレゼント、記念、自分へのご褒美に。特別な瞬間に手に入れたいジュエリー。高額だからこそ、失敗したくない! 自分らしく似合っていて、長く使えるものを選びたい。けれど、いったい何を、どこで買えばいいのかわからない……。そんなジュエリー初心者のために、選び方や、素敵に見える着け方のコツ伺いました。教えてくれるのは、ファッション業界の、おしゃれ上級者たちも憧れるジュエリーディレクター・スタイリスト、伊藤美佐季さん。その美しいスタイリングと、本当に良いものを見抜くセンスは、「伊藤さんが選んだものが、次に流行るジュエリー」と言われるほど。本連載では、著書『そろそろ、ジュエリーが欲しいと思ったら』の中から、そんな伊藤さんのジュエリー論をご紹介していきます。

ジュエリーを着けるのは
自分のためでもあり、他人のためでもある

ジュエリーを着けるのは<br />自分のためでもあり、他人のためでもあるPhoto by 成尾和見

 30代でイタリアに行くまでの私は、「ジュエリーは誰かに見てもらうためではなく、自分のためにするものだ」とやや頑なに思っていました。おそらくバブル経済を迎えた当時、「異性にもてたい」「自分を高く見せたい」という気持ちでジュエリーを選ぶ人が多かったことに対する、自分なりのアンチテーゼだったのかもしれません。

 でも、イタリアで私の意識は変わりました。
 ここでは老若男女問わず、みんなが総じてきれいなものが好きな上に、他人を褒めるのがとても上手。見知らぬ日本人の私がジュエリーを着けて歩いていても、何人もの人が「素敵だね」「よく似合うよ」と褒めてくれるのです。褒めてもらうと、やはり嬉しくなるもの。「これこそジュエリーの力なんだ」と、感じたことを覚えています。

 イタリアの女性たちは、はちみつ色の肌、テラコッタ色の肌、ピンクがかった肌、抜けるように白い肌……と、肌の色がそれぞれ違います。髪も、ブロンドや黒、明るい茶色などさまざま。だから彼女たちは、自分に似合うジュエリーの地金や色石を、とことん考えて選んでいます。
それは、とにかく周りから「きれいだね」と褒めてもらうため。褒められることでもっと素敵になれることを、彼女たちはわかっているのです。

 ジュエリーは、自分で見てもパワーや癒しをもらえますが、他人に見てもらって褒めてもらうことでも、違う形のパワーを得られるもの。それを意識して、ジュエリーを選んでみるのもひとつの方法だと思います。

ジュエリーを着けるのは<br />自分のためでもあり、他人のためでもあるPhoto by 成尾和見
以前、海外の宝石商から「枕の下に入れて一晩眠ってみていい夢をみることができたら、その石とは相性がいい」という話を聞いたことがあります。この2つは私にいい夢をみせてくれた相性のいい色石。昔からなぜかグリーンの色石に惹かれる私は、気分がすぐれない日に身に着け、何度も助けられました。特に右のエメラルドのリングは、石のツルツルした触感にも癒されることが度々。見て触って癒され、元気になれる大切なリングなのです。(伊藤美佐季さん私物)

 2019年も、残すところあと少しとなりました。この連載を通して、少しでもジュエリーに興味を持っていただけましたか。ジュエリーは、極論するとあってもなくてもいいものなのかもしれません。ですが、特別な時にだけ着けるものではなく、「自分らしくいられる」「毎日着けられる」日常使いのジュエリーは、私たちの人生に、奥行きをもたらしてくれるひとさじのスパイスであり、同時に、長く共に生きる伴侶のような存在でもあると思うのです。

 ジュエリーが好きな方も、まだジュエリーを買ったことがないという方にも、この連載と、そのもとになっている『そろそろ、ジュエリーが欲しいと思ったら』を通して、おしゃれであってこれ見よがしではない、自分の存在を効果的に引き立たせてくれる、「自分だけのジュエリー」を見つけていただければと思います。