ほどなく「オリンピック・イヤー」が始まる。前回の東京五輪が開催された1964年は、数年後にGNP規模が世界2位に躍り出るなど、その後のわが国の世界におけるプレゼンス向上の「助走」となる1年となった。では、数十年後に振り返ったとき、2020年はどのような年として認識されるのか。そして、取り組むべき課題は何か。(日本総研副理事長 山田 久)
2019年の経済基調を決定づけた
米中対立下のデカップリング景気
まず、2019年の経済を振り返ることから始めよう。今年の世界経済の基調を決めた最大ファクターは「米中対立の本格化」であったといってよい。2019年の世界の貿易量はマイナスに落ち込んだとみられるが、その主な要因は(1)米中間の貿易の大幅減少および、(2)欧州域内の貿易停滞に求められる。一方、米国の貿易は、対中国以外は比較的堅調に推移しており、欧州の貿易停滞はドイツの対中輸出の減少が起点になっている。
こうしてみれば、今年1年の貿易停滞の主因は中国の輸入減少にあることがわかる。それは米中摩擦による面もあるが、世界的な半導体市場の減速の影響が無視できない。
中国国内の要因も大きい。同国の企業部門は多額の債務を抱え、過剰な生産力が構造問題になっている。当局は、景気失速に陥らない程度にその調整を進めており、固定資産投資の減速が輸入の大幅減少の原因になっている。
家計部門については、統計上弱さがみられるが、十分捕捉されていない都市部のサービス消費は堅調である。中国輸入の大幅減少を、同国経済の失速を反映したものとの見方もあるが、実態はなお底堅さを維持しているとみるべきであろう。
いずれにしても、世界貿易の下振れを反映してわが国の輸出も低迷し、製造業の景況感は悪化した。