リオ市民を激怒させた、ブラジル国立博物館の火災。リオ五輪で財政難となったため、必要な消火設備の整備などを怠ったとされている。これは日本も対岸の火事ではない。実は、五輪景気で潤うのは開催されるまで。開催後は不景気に陥るというのは、過去の開催地の例を見ても「常識」なのだ。(ノンフィクションライター 窪田順生)
五輪のせいで財政難…
ブラジルの博物館火災のお粗末
先日、地球の裏側から、なんともやりきれないニュースが届けられた。リオデジャネイロのブラジル国立博物館で火災が発生して、200年の歴史ある建造物だけではなく、2000万点を超える収蔵品の約9割が全焼してしまったのである。
灰となったものの一例を挙げていくと、南米大陸で発掘された最古の人類化石、エジプトのミイラ、コロンブスが来る以前の南米古代文明のミイラ、さらには噴火で一瞬でなくなった古代都市・ポンペイのフレスコ画などがある。つまり、「人類の宝」ともいうべき世界的な文化財がパアとなったのだ。
やりきれないのはそれだけではない。実はこの博物館、現地ではかねてから火災の危険性が指摘され、多くの人がスプリンクラーなどの消火設備をつけるべきと訴えていた。だが、ブラジル政府が財政難を理由に科学分野の予算をザックリ削ったことで、「放置」されてきたのだ。
今回の悲劇については、ブラジル国民の間から、「五輪が悪い」という声がチラホラと出て抗議デモにまで発展している。
消火栓が作動しなかったのは、国に輪をかけて財政が厳しいリオ州がメンテナンス費を削ったからなのだが、一部市民から、このリオ州の苦境を招いたのが、2016年のリオ五輪のせいだと指摘されている。
つまり、2年後に五輪開催を控える日本にとって、これは決して「対岸の火事」ではないのだ。