2019年8月に刊行された『こども六法』。これまでにありそうでなかった「子ども向けの法律書」として、発売されるやいなや品薄が続くほどの大ヒットとなった1冊だ。著者の山崎聡一郎氏は「いじめや虐待に苦しむ子どもたちが、自分自身を守る方法を伝えたい」との思いから本書を執筆したという。その背景には、筆者自身のいじめ被害経験がある。(清談社 ますだポム子)

被害者と加害者の両方を経験し
いじめ問題の難解さに気付いた

『こども六法』の表紙5歳児から社会人まで、幅広い層に読まれている『こども六法』(弘文堂)

 令和最初の夏が終わりかけた頃、『こども六法』(弘文堂)は発売された。本書は、日本国憲法・刑法・民法・商法・刑事訴訟法・民事訴訟法の6つの法律からなる「六法」を、子どもでも読みやすい表現に訳して収録した法律書だ。ただし『こども六法』というだけあり、子どもにあまり関係のない商法の代わりに、少年法といじめ対策推進法を掲載しており、まさに「子どものための法律書」となっている。

 著者の山崎聡一郎さんの専門は社会学。法律の専門家ではない山崎さんが法律書を上梓しようと決意したのは、過去に自身が受けたいじめがきっかけだという。

「小学校5年生から2年間、いじめの被害に遭っていました。その後、中学生になって図書館で六法全書を読んだんです。そのとき、『いじめられていた当時の自分に法律の知識があれば、自分の身を守れたのではないか…』と後悔しました。そこから、自分自身を守るために法律の勉強を始めたんです」

 自身がいじめ被害者だった山崎さんは、「子どもが自分の身を守れる武器が欲しい」と考え、その答えが「法律」だったのだ。さらに山崎さんは、中学生になるといじめ加害者の立場も経験。この経験が、『こども六法』を生み出そうという気持ちを強くしたという。

「僕がいじめ加害者になったのは、部活動のトラブルがきっかけでした。自覚はありませんでしたが、今思えばやはり、自分は加害者になっていたと思います。もちろん、その事実に気付いたときはショックでしたし、なかなか認められませんでした」