問題人材の劇的改善が
「ほめ達」誕生の契機に

 12年前、「ほめ達」が誕生するきっかけとなった出来事があります。ある焼き鳥レストランチェーンから覆面調査の依頼がありました。午後5時オープンから午後8時までの売り上げが、他店舗に比べて悪い店舗がある、その時間帯の様子を調査してほしいとのこと。

 早速、調査員を派遣すると、レポートには、やはりダメ出しが並んでいます。比較的空いている時間なのに、料理の提供が遅い。スタッフの巡回が少ない。笑顔があまりない。

 そんな中、あるレポートの中に、1人の女性アルバイトスタッフの丁寧な仕事ぶりを評価する報告がありました。

「お客様が帰られた後のテーブルを一所懸命に拭いている」

「毎回、お客様が帰られるたびに、テーブルの下をチェックして『忘れ物なしです』と確認。ある時には『あっ、忘れ物!お客様、傘をお忘れです!』とレジまで全力で届けていた」

 このレポートを見た私は、このアルバイトスタッフを中心とした報告書に仕上げようと考え、「ほめる」を意識して実践し、報告書を作成しました。

 このアルバイトスタッフのとった行動を大きく取り上げた上で「改善すべき点は多い店舗ではあるが、このスタッフのいるこの店舗のこれからの成長が楽しみです」とレポートを締めくくったのです。

 経営者から報告書を受け取ったその店の店長は、この報告書をスタッフが待機するバックヤードに貼り出しました。

 翌日、この報告書を、穴が開きそうなぐらい食い入るように見ているスタッフがいました。それは、報告書で「ほめる」スポットライトを当てて取り上げた、あのアルバイトスタッフでした。

 彼女は、自分のことが書かれたほんの数行の部分をじっと見続けていました。

 実は、このスタッフは、店ではダメダメバイトの烙印(らくいん)を押されていました。仕事は丁寧だけど、遅い。ミスも多い。仕事を覚えるのにも時間がかかる。比較的お客の少ない、ゆっくりの時間帯ならばまだ大丈夫だけど、午後8時を過ぎて満席に近い状況になると、パニック状態になってさらにミスが増える。店長も正直、もう辞めてもらわないといけないかと考えていたほどのスタッフだったのです。

 しかし、報告書を穴が開くほど見つめている彼女の様子を見て、店長はこう切り出しました。