米国とイランの対立は、とりあえず一触即発の状態から脱したものの、中東のリスクは引き続き大きい。これを機に、日本は原油の輸入元の多角化を図るべきであるが、一筋縄ではいかない事情がありそうだ。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
米国とイランの危機はとりあえず収束
年明け早々に世界を驚かせた米国とイランの対立であるが、とりあえず双方が自重したため、最悪の事態は免れたようだ。原油価格も、一時的に高騰したが、その後は事件前の水準に戻っている。
今後の推移は慎重に見守る必要があるなかで、本稿では視点を変えて、日本のエネルギー安全保障について考えてみたい。
世界的に見て「原油」は余っている
1973年の石油ショックの頃、「世界の石油は30年で枯渇する」といわれていた。それから50年たった今、世界的に見て原油は余っているようだ 。
そもそも原油の埋蔵量とは、「現在の技術で掘削して採算がとれる原油の量」であるから、技術が進歩したり原油価格が上がったりすれば、埋蔵量は増える。
最近でもシェールオイルの掘削技術によって米国の原油生産量が飛躍的に増加して、かつて大量の原油を輸入していた米国が原油の純輸出国になるなど、原油を巡る世界情勢は大きく変化している。
世界の原油生産がアラブ諸国に偏っていた状況も、長期的に変化してきた。米国以外にも、技術の進歩や原油価格高騰を映じて油田開発に注力する国が増えたからである。
そうした事実から、中東のアラブ諸国で何か起こっても、世界経済全体として第1次石油ショックのような大混乱が起こる心配はなさそうだ。