この数年、日本でもブームになっている「デザイン思考」。「以前から耳にはするが、よくわからない」という人も多いかもしれない。その理由は、デザイン思考が「派生」と「進化」を繰り返しているからだ。わかりやすく理解してもらうため、「本家」ともいえるIDEO関係者の書籍やコメントを基に解説する。(ダイヤモンド社編集委員/クリエイティブディレクター 長谷川幸光)
人は誰でも
無限の創造性を秘めている
「デザイン思考」のコンセプトは、米国のデザインコンサルティングファーム、IDEO(アイデオ)が1980年代に提唱した。その後、世界中に広がり、デザイン思考をカスタマイズした手法や、独自解釈したものなどが、次々に生まれた。今もなお、社会状況とともにデザイン思考は進化を続けているのだ。
まず、デザイン思考の根底の哲学は、「人間はみんなクリエイティブだ」というものである。これは、IDEO創設者のデイヴィッド・ケリー氏と共同経営者のトム・ケリー氏が記した書籍のタイトル『Creative Confidence』(創造力に対する自信)にも表れている。自分の創造力を信じることが、イノベーションを起こす上での核となると考えるのだ。
自身はクリエイティブ系ではないとか、絵心がないとか、そういった「信じ込み」や「バイアス」は捨てなければならない。むしろそれらは言い訳であり、開花のタイミングだけで、人間は誰でも無限の創造性を秘めているという。
トム氏は前出の著書で「デザイン思考とは、イノベーションを日常的に行うための方法論のひとつだ」と記している。
あくまで「方法論のひとつ」であるため、デザイン思考を使えば、必ずイノベーションが起こるとか、ユニークなアイデアが生まれるというわけではない。デザイン思考はあくまで、それらを起こすために大切であると考えられる要素をまとめ、ひとつの方法論、つまり案として提供するもの。いわば、便利な道具を選んでパッケージした「ツールキット」なのだ。この点をきちんと押さえておく必要がある。