「時代のバトン」をつないでいく

塩田:もう一つの「つながり」として「時代をつないでいく」というのもあると思うんです。僕は、今の世界で経営をしているんだけど「資本主義って嫌だな」と思うことはたしかにあるんですよ。

でも、過去の人たちが資本主義を作ってくれたから、今僕はここにいる。周さんの「意味がある」というのも、今の時代の僕らだけが幸せならいいんじゃなくて、過去の思いともつながって、もっと大きな意味になっていくのかなって思うんですよ。

箕輪:それは視座が高い。

【山口周×塩田元規×箕輪厚介】<br />キーワードは「ジャズ」。<br />時代と共に「つながり」もアップデートせよ箕輪厚介(みのわ・こうすけ)
幻冬舎編集者
1985年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、2010年双葉社に入社。ファッション雑誌の広告営業としてタイアップや商品開発、イベントなどを企画運営。広告部に籍を置きながら雑誌『ネオヒルズ・ジャパン』を創刊しアマゾン総合ランキング1位を獲得。2014年、編集部に異動。『たった一人の熱狂』(見城徹・著)、『逆転の仕事論』(堀江貴文・著)を編集。その後幻冬舎に移籍し、2017年にNewsPicks Bookを立ち上げ、編集長に就任。創刊1年で100万部突破。また1300名の会員を擁する日本最大級のオンラインサロン「箕輪編集室」を主宰。既存の編集者の枠を超え、様々なコンテンツをプロデュースしている。著書に『死ぬこと以外かすり傷』(マガジンハウス)など。

山口:塩田さんの話を聞いていて、僕も「バトンを渡すイメージ」というのを感じることはありますね。あと50年働けるわけじゃないから「自分の代だけではできないだろうな……」と空しく思う瞬間もあるんだけど、でも逆に、ずっと大昔からの「バトンを貰ってる」という感じもたしかにある。そういう「過去から引き継いで、誰かに渡していく」という「つながり」と、今の世の中で「横につながっていく」という2つの「つながり」があるんでしょうね。

じつは、僕は本の書き方を『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』から、ちょっと変えたんですよね。正しいことを言うのをやめたというか、「正しいこと」より「好きなこと」を言うようにした。

塩田:へぇ〜、おもしろいですね。

山口:それをやってすごくいいなと思ったのは、自分と意見が違う人は遠ざかっていくんですよね。嫌気性のばい菌みたいに。そして、好きなことが一緒の人は集まってくる。同時代の「横のつながり」という話で言えば、みんな好きなことを言って、好きな音楽が一緒の人が集まってくるバンドみたいな感じに、どんどんなればいいと思っているんですよ。一番のモデルはやっぱりジャズですよね。

塩田:それ、超わかります。

山口:ジャズって、ツアーを組むときにメンバーを集めて、アルバムを作ったりするので、たとえばマイルス・デイヴィスが「今度ツアーをやる」となったら「ジョン・コルトレーンを連れて行く」とか「ピアノはビル・エヴァンスだ」とかってなっていくんですよ。

それで、また次は3人くらいのメンバーが抜けて、新しい人が2人入ってくるとか、そういう感じでやっていくんです。音楽性が合わなければ解散するし、また再結成することもある。僕らの世界も、そういうふうに持ってきたい。

単にお金の関係じゃなくて、価値観が一緒の人たちが集まってやるっていう感じ。「パフォーマンスが出せなかったら、切られちゃう」みたいなファイナンスの関係じゃなくて、もっと違う安心感というか、独特の所属意識、仲間意識みたいなもので「つながり」をつくれるといいなと思うんです。

【山口周×塩田元規×箕輪厚介】<br />キーワードは「ジャズ」。<br />時代と共に「つながり」もアップデートせよ

塩田:ジャズはいいですよね。僕も会社でよくジャズの話をするんですけど、今の話は深いですよね。僕は「セッションしているときに、自由にコラボして、おもしろいものを作ろうよ」という感じでジャズの話をしているんですけど、今のツアー単位で集まってくるジャズの話は、すごくおもしろいですね。僕の考えにも、とてもつながった気がします。

山口:まさに箕輪さんなんて、マイルス・デイヴィスみたいなものですよね。「ちょっと今度ユニット組む」とか「アルバム作る」となって、新たにメンバーを集めるわけだから。

箕輪:たしかにメッセンジャーグループで「これやろうよ」と言って、バーと集まって、バーと別れるみたいな感じはありますね。

山口:そうですよね。

箕輪:でも、それだけにネタがつまらないと誰も集まらない。報酬の代わりに、おもしろいネタを提供しなきゃという思いは常にありますね。

塩田:わかるなぁ。経営者の仕事も「ネタを提供している」という感じがするもん。

山口:結局それって「モチベーションを作っている」ということだと思うんですよ。今の世の中、お金もテクノロジーも余っているけど、モチベーションは不足している。だから「モチベーションを作れる人」というのが、この時代の優秀な人なんですよ。それを「作れる人」か「作れない人」かということで、会社もコミュニティも全然違ってくるんだと思います。

(第4回へ続く)

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