日本のソフトウエア導入における受託開発の割合(2017年度)
昭和末期、日本の半導体産業が米国を席巻し、ジャパン・アズ・ナンバーワンという言葉さえ流行した。当時、日本は世界に先駆けてオンラインシステムを構築し、通信のデジタル化でも先頭を走り、米国にとって大きな脅威と捉えられていた。
しかしそれから30年、わが国におけるIT投資は停滞し、1995年を基点とすると米国とは3倍もの差がついている。欧州にも後れを取り、もはや後進国という言葉さえ囁かれる。「情報通信白書」によれば、この間企業では情報システム構築はコア業務でないという理由で、システム開発の外部委託が進んだことを指摘している。
米国のソフトウエア投資を見ると自社開発、受託開発、パッケージがそれぞれ約3分の1の割合であるのに対し、統計方法が異なるが日本のソフトウエア導入内訳は受託開発が88.3%(パッケージが11.7%)と圧倒的だ。IT人材の所属を見ても、日本では72%がベンダー企業に属し、欧米の割合と比較して2倍近いことは日本の受託開発依存が裏付けられる。
外部に依存したIT部門は、社内でも「コア業務でない」縁の下の力持ちと見なされ、経営からは遠く離れた存在となっている。昨年夏、大手流通業のバーコード決済サービスが不正アクセス問題のため開始早々1カ月でサービスを廃止する事態となった。このとき浮き彫りになったのは、経営陣と技術の現場との隔たりである。
AI/IoTの時代になってデジタルが社会に浸透すると、ビジネスそのものが変わるデジタルトランスフォーメーションが起きる。GAFAなどはまさにビジネスそのものを変えるゲームチェンジャーだ。各国は巨大IT規制に躍起となっているが、それだけではデジタルの波にのまれてしまう。
今日存在するビジネスが明日も存在するとは限らない。デジタル時代に対応するため、システム構築をコア業務と位置付け、本業をデジタル視点で再定義し、IT部門と経営部門が一体となってビジネスそのものを変革していかなくてはならない。デジタル技術やIT部門軽視の経営では、デジタル時代は乗り越えられない。
(富士通総研 経済研究所 主席研究員 榎並利博)