自動車 “最強産業”の死闘#14写真提供:エスライド

ソニーグループが大株主のタクシー配車アプリ企業エスライド(S.RIDE)が業界初の2年連続最終黒字を達成した。その理由には、地道に鍛えてきた「三つの足腰」があるという。同社は、ソニーグループとのシナジーをどのように生み出しているのか。特集『自動車 “最強産業”の死闘』の#14では、ソニーグループ出身でエスライド社長を務める橋本洋平氏に好調の秘訣などを語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 山本興陽)

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他アプリとの違いは“使いやすさ”と“捕まえやすさ”
展開エリアは「無理に広げない」

――ユーザー視点で、「エスライド(S.RIDE)」は他のタクシー配車アプリとは何が異なるのでしょうか。

 主に二つあります。

 一つ目が、アプリの「使いやすさ」です。

 エスライドのアプリは、ソニーグループのデザイナーやエンジニア、企画メンバーが出向して手掛けており、起動してから配車までのUI(ユーザーインターフェース)が良いのが特長です。われわれのターゲットは、月10回以上利用するヘビーユーザーやビジネスパーソンです。こうしたこともあり、手間や時間をかけないカスタマージャーニー(顧客体験)に力を入れています。

 例えば、アプリ画面で配車時に誤って画面をタップしてしまうことも、時にはあるでしょう。しかし、われわれのアプリでは、配車時に画面を「スライド」します。誤って画面をスライドすることは基本的にないでしょう。「誤った配車をしにくい仕組み」として、スライド方式を採用しています。

 二つ目が、東京などの「主要エリア」でタクシーを捕まえやすいことです。

 配車需要が多い所に、しっかりとタクシーを供給する体制をつくり上げています。ここでは、タクシー会社側の視点も重要です。当社株式の50%をタクシー会社が保有していますが、彼らと連携してタクシー側のオペレーションを日々改善しています。

 配車アプリのサービスは、エンドユーザーだけでなく、タクシー会社の満足度も上げることが重要です。従業員満足度が上がれば、接客の質や、お客さまの満足度も上がるといわれることがありますが、こうしたことはわれわれにとっても同じです。

――現在の展開エリアは、首都圏と大阪、名古屋、仙台など一部の地方都市に限られます。今後の展開拡大の考え方は。

 あくまでもわれわれの主力は首都圏です。首都圏にいる方々が、出張や旅行などで訪れるシナジーのある都市に展開していきます。供給密度を上げたり、既存客とのシナジーをつくったりするのが大事だと考えていますので、無理に47都道府県に広げていくことはしません。

――他の配車アプリ企業は、赤字の企業もあります。そうした中で、業界初の2年連続最終黒字となりました。その理由は。

アプリの使いやすさと主要エリアでの捕まえやすさを強みと挙げる橋本社長。その橋本社長率いるエスライドは、配車アプリ業界初の2年連続最終黒字を達成した。黒字化の裏には、「鍛えた三つの足腰」があったのだ。次ページでは、三つの足腰の詳細と、ソニーグループとの提携について大公開する。