デジタル技術を駆使して新たなビジネスモデルを生み出すデジタルトランスフォーメーション(DX)があらゆる業界で進行している。企業のDX投資が加速した2017年を「DX元年」と位置付け、コンサルティング事業とITソリューション事業の両輪で企業のDXをけん引するのが、野村総合研究所だ。此本臣吾会長兼社長は、今こそDXに大きくかじを切る判断が経営者に求められる時だと説く。(聞き手/ダイヤモンド編集部 重石岳史)
――野村総合研究所はシンクタンクのイメージがありますが、コンサルティング事業は、2018年度の売り上げ約5000億円の1割を下回る(8.2%)状況なんですね。
弊社は1988年、野村総合研究所と(野村證券電子計算部から独立した)野村電子計算センターが合併してできた会社で、それぞれ独立性が高いコンサルティング事業とITソリューション事業を持っています。コンサルティング事業でいえば、例えば米国のマッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン・コンサルティング・グループといったライバルを相手に、自立してしっかりと競争できる経営をしているわけです。
その中で僕は17年を「DX(デジタルトランスフォーメーション)元年」と呼んでいるのですが、その頃から各社がITを使い、ビジネスモデルを新しくつくり替えていこうという動きが出てきた。
数年に1度の大きな基幹系システムの刷新という従来のシクリカル(循環的な景気変動)の動きとは別に、ビジネスをITで変えるという新たな投資が乗っかってきたんです。
システムの刷新に関しては従来通り各社の情報システム部門がプロジェクトオーナーですが、DXの場合はビジネスそのものを大きく変えるという話なのでビジネス部門、あるいはCEO(最高経営責任者)がプロジェクトオーナーになる。要はコンサルがお客さんと十分に会話し、どんなビジネスモデルにするかというところから入らないといけない。従来のITビジネスとはかなり性質が違うわけです。
極論すれば17年以前、コンサルティングはCEOと経営戦略の話をし、ITソリューションは情報システム部長と基幹システムの話をし、別々に仕事をしていました。
それが17年以降は、コンサルティングとITソリューションが合体しないと案件の組成ができなくなった。そうなればもともと独立性が強く、競争力があったわれわれの強みが今功を奏している。
大きな声じゃ言えませんが、ITシステムの会社がコンサルティングのチームを新たにつくっていると報道されている。あれはDXをしっかり仕事にするためにはビジネスモデルの話をしないといけないから、システムのためのコンサルティングチームを急ごしらえで組成しているということだと思う。われわれにはそれぞれを五十数年にわたって独立してやってきた実績がある。
ご指摘の通り、弊社のコンサルティング事業は1割程度で、9割以上はITソリューション事業です。しかしこのITソリューション事業を大きくするためにレバレッジの役割を担うのが、コンサルティング事業です。
ここでCEOと深い信頼関係を築き、「ビジネスモデル変革のためにテクノロジーを使えばこういうことができる」ということを提案し、そこからシームレスにシステムを実装するところまで仕事をする。
そういう意味では、17年を境に弊社自身も大きく変わったっていうことなんですよね。それはわれわれが自主的に変わったところもあるけれど、やはりマーケットが変わったんです。