生物とは何か、生物のシンギュラリティ、動く植物、大きな欠点のある人類の歩き方、遺伝のしくみ、がんは進化する、一気飲みしてはいけない、花粉症はなぜ起きる、iPS細胞とは何か…。分子古生物学者である著者が、身近な話題も盛り込んだ講義スタイルで、生物学の最新の知見を親切に、ユーモアたっぷりに、ロマンティックに語る『若い読者に贈る美しい生物学講義』が発刊。4刷、2万6000部とベストセラーになっている。
養老孟司氏「面白くてためになる。生物学に興味がある人はまず本書を読んだほうがいいと思います。」、竹内薫氏「めっちゃ面白い! こんな本を高校生の頃に読みたかった!!」、山口周氏「変化の時代、“生き残りの秘訣”は生物から学びましょう。」、佐藤優氏「人間について深く知るための必読書。」、ヤンデル先生(@Dr_yandel) 「『若い読者に贈る美しい生物学講義』は読む前と読んだあとでぜんぜん印象が違う。印象は「子ども電話相談室が好きな大人が読む本」。科学の子から大人になった人向け! 相談員がどんどん突っ走っていく感じがほほえましい。『こわいもの知らずの病理学講義』が好きな人にもおすすめ」と各氏から絶賛されたその内容の一部を紹介します。
藤子マンガと若さへの憧れ
藤子・F・不二雄のこんなマンガを読んだことがある。あるところに勉強熱心な中学生がいた。彼は友人と遊ぶこともスポーツを楽しむことも我慢して、ひたすら勉強する。目標は、一流の高校や大学を出て、人生の成功者になることだ。
彼の家の近くには、大きな屋敷があった。そこはある学者の家だった。学者は研究が成功したため、大金持ちになっていた。中学生は学者の家を見て、あんな家に住むようになるのが目標だと友人に話していた。
それからいろいろあって、ある夜、中学生は学者から、体を交換しないかと持ち掛けられる。地位も名誉も財産もある学者は、中学生から見れば人生の成功者だ。中学生がこれから進もうと思っている道を実際に歩んできた、中学生の夢を実現した人だ。そのため中学生は学者と体を交換してしまう(実際のマンガでは記憶の交換という設定になっていた)。
そして中学生は、地位も名誉も財産もある人生の成功者になった。しかし学者の余命はあと6カ月で、体もかなり病んでいた。それからまたいろいろあって(このあたりの中学生や学者の心情がストーリーとしては重要なのだが、そこは省略して)、最後に中学生は、学者から中学生に戻ることができた。だいたいそんな話だった。
もちろん年を取ることは、悲しいことでも悪いことでもない。いや、悲しいことも悪いこともあるかもしれないが、それがすべてではない。年を取ることに対する思いは、人それぞれだ。
とはいえ、若さに対する憧れというものは広く存在する。そして現在では、その憧れがただの夢物語ではなく、部分的には実現できる可能性が出てきた。それは人工幹細胞が作られるようになったためだ。人工幹細胞としてはES細胞やiPS細胞が有名だが、そもそも幹細胞とは何だろうか。