乾杯をしグラスを置こうとすると、さっとコースターをテーブルに置いたので、私はその上にグラスを置きました。

「そんな神経質な人でしたっけ」と聞くと「水滴がつくのが嫌なんだよね」とトシキさんは言いました。

 トシキさんは私に「来る途中に怪しいやつはいなかったか」と聞いてきたり、「盗聴されてる可能性があるからあまり大きな声でしゃべるな」と言ったりしました。

 そして、最近家に帰って来ると「エレベーターが12階で止まっていることがある」と話し始めました。

「12階は俺の部屋しかないから12階で止まっていることなどあり得ない、これはおかしい」と語気を強めたので、(自分は大きな声でしゃべるのかよ!)と心の中でツッコんでいました。

 私は「10階の人が間違えて12階を押してしまったんじゃないですか?それで途中で気づいて10階で降りたけど、エレベーターは12階まで行ってしまったとか」と言いながら、カバンから盗聴器を探す道具を取り出し、部屋の隅々を怪しい電波が出ていないか調べていると、なぜか水を張った洗面台の中にスマートフォンが2台沈められていました。

 私は驚き「これはなんですか」と聞くと、「この端末のカメラとマイクを通して俺の部屋が配信されていて電源を切ってもダメだったので壊した」と言いました。

監視されていると言っていた
建物は見当たらず

 さらにベランダを調べるため、カーテンを開けようとすると「すぐにやめろ」と言われ「外から監視されているからこの時間帯はカーテンを開けるな」と言ってきます。

 私は冗談で言っているのかと思いましたが、声のトーンが冗談には聞こえません。

 トシキさんは何度もトイレに行くので、トイレに行っている間にカーテンを少し開けて外を見ると、周辺にはトシキさんの部屋と同じくらいの高さの建物はなく、肉眼で見る限り監視されている様子は全くありませんでした。

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