4月から新しい校長を迎え、さらに飛躍する東京女子学園 写真提供:東京女子学園中学校・高等学校 

短期間で大きく変貌を遂げる学校の特徴

 4日以降の入試は中堅校以下が中心となる。すっかり上位校の仲間入りをした広尾学園も、5日に3回目の入試を行う。2007年に校名変更する前は順心女子というごく普通の女子校だった。それがわずか10年ほどで、誰もが知る人気の共学校に変貌を遂げている。

 生徒募集に効果がある施策としてよく挙げられるのが、新校舎、新制服、そして共学化である。概ね3年程度は賞味期限があるのだが、それだけで人気を維持するのは難しい。卒業生の進学実績も募集には大きく影響する。ただ、それはあくまでも6年前に入学した生徒の努力のたまものであり、これから入る生徒が同様の進路を確保できるかは未知数である。

 大学付属校でもない限り、私立中高一貫校は中小企業のようなものであり、理事長や校長、副校長や教頭といったトップの考えと行動いかんで、学校の中身を短期間のうちに大きく変えることが可能である。

 首都圏でも2025年以降は小6生の減少に直面し、中学受験市場は穏やかに縮小していく。学校改革を進めて時代のニーズに合った教育を提供できないと、どんな伝統校であれ淘汰されてしまう。

 実績のある校長をスカウトしてきて、急速に学校改革を進める学校がこれからも増えていくだろう。第二の広尾学園はどこなのか。先物買いの要素もあるが、これから大きく変わりそうな学校をいくつか見ていきたい。

 難関・上位校と中堅校以下に二極化が進み、生徒募集に苦しんでいる女子の中高一貫校は少なくない。

 例えば東京女子学園である。所在地の港区芝周辺は、山手線新駅、森ビルを中心とする地域再開発が相次ぎ、臨海部を含む東京の新たな都市軸として浮上しつつある。すぐ近くにある戸板女子短大は、付属の中高が移転、三田国際と名称を変更し共学化、現在は世田谷区用賀の人気校に育った。東京女子学園は現在地で新しい時代を生き抜く力を培おうと、特に理系教育に注力して、創立120周年となる2023年に向け学校の内容を一変させていく。

 この3年間、専用回線が引かれた校内で、生徒がiPadを使って探究のプレゼン資料を作成したり、生徒会選挙での投票を行うなど使いこなしている。こうした実績を背景に、知識詰め込み型ではない情報検索能力などを測ろうと、1日・2日の算数1科午後入試で初めて実施したのが「スマホ持ち込み OK 入試」だ(11日にも再度、2次募集の1つとして実施予定)。

 4月の新年度から、慶應義塾大学総合政策学部前学部長で、慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部部長も務めた河添健教授が新校長に就任予定となっている。「世界とつながる女性」をスローガンに掲げて中高一貫コースなどを設けた。ICT(情報通信技術)を活用しながら、データサイエンスに関連する授業を中1から週1コマ設けるなど、カリキュラムも変える。加えて、理系教育の伝道師的な活動を続けている「子どもの理科離れをなくす会」代表の北原達正氏が課外授業を受け持つ予定だ。

 医学部を筆頭に、高まる一方の女子の理系志向。これまでは難関校がそうしたニーズに応えてきたが、東京女子学園のような中位校での取り組みが本格化していくことで、受験生の志望校選択の幅が広がっていくだろう。6日に2回目の入試が設定されている。